はじめに
定年退職後にフリーランスとして仕事を請け負うとどうなる?
定年後に再雇用されて給与をもらい続ける場合は、基本的には社会保険に加入し続けたままとなるので、特に変更はありません。厚生年金保険料も払い続けることになりますが、扶養家族がいる場合、そのまま家族分も入り続けることができます。さらに、病気などで欠勤した場合に、健康保険から傷病手当金の支給があるケースもあります。
一方、会社を退職してフリーランスとして仕事を請け負う場合には、給与所得はなくなり事業所得となりますが、会社の社会保険がなくなるので、国民健康保険・国民年金へ移行することになります。国民健康保険に扶養の制度はないので、扶養の方の分も国民健康保険料がかかり、再雇用のケースと比較して負担が増える可能性があります。就業規則で扶養家族に対する手当が設けられている場合も、従業員ではなくなるので受け取れなくなります。
また、国民年金は保険料を払うのは原則60歳までなので、年金の保険料はかからないことになり、その点では負担は減りますが、社会保険の扶養に入れていた配偶者が60歳未満の場合は、その配偶者分の年金保険料がかかることになります。さらには、病気などで欠勤した場合に、傷病手当金の支給などはないため、その点は会社の社会保険の方が手厚いといえます。
なおフリーランスとして仕事を請け負うようになると、年金を受け取りながら事業としての収入も得ることになります。この場合は、年金が「雑所得(公的年金等)」という区分で計算され、その所得金額の上に事業所得が加わることになります。給与の時と同様に、事業でマイナス(赤字)があれば、雑所得から引いてもらえます。
事業でプラスが出る場合は青色申告特別控除額で税金を減らして、マイナスが出る場合も年金から差し引きしてもらえるということを考えると、定年後に細々と仕事を請け負う場合でも、正しい知識があれば節税が可能になるということです。なんて……喜ばしい!
配偶者控除・配偶者特別控除
再雇用でもフリーランスでも、配偶者の給与収入が年150万円以下であれば38万円の配偶者(特別)控除を、扶養家族の給与収入が年103万円以下であれば38〜63万円の扶養控除が同様に受けられます。このとき、月50万円の月収から月30万円に減額があったとすると、所得の金額が減ることで税率が低くなるため、同じ38万円の控除でも節税の効果が変わってきます。
課税所得金額が330万円のラインを下回ることで所得税率が20%から10%に下がりますので、諸々の控除を引くと月収30万円なら10%の税率となります。38万円の節税効果は住民税10%と合わせると20%、給与50万円の場合は所得税と住民税を合わせて30%の税率でしたので、節税の効果が大きかったと言えます。
共働きの場合なら、一方がフリーランスになって極端に収入が減り、所得(もうけ)が低くなるのであれば、配偶者控除を新たに受けられる可能性も検討しましょう。配偶者特別控除は給与の場合は年収150万円以内で38万円控除ですが、フリーランスの場合は事業所得が95万円以内で38万円控除が受けられます。
答申の中では配偶者控除についても、女性の社会進出などを背景として、配偶者が年末のパートを休んで調整することにより、配偶者控除をなんとか確保しようとする、いわゆる「給与103 万円の壁」の指摘があります。控除については壁が解消されているものの、「103 万円」という水準が企業の配偶者手当制度などの支給基準に援用されていることなどから、今もなお「103 万円の壁」が心理的な壁として作用していることが指摘されています。また、社会保険料を自分で負担する「130万円の壁」もまだまだ意識されているといえます。
共働世帯が増えているという状況からも、今後の配偶者控除がどうなっていくのか、目が離せませんね。
世の中の動きに合わせて、税制も少しずつ変化していきます。申告すれば還付してもらえる税金があるのに、全く知らないでそのまま放置されるのは「なんて……嘆かわしい!」ですね。今後自分に必要となるかも知れない所得税の取り扱いについては、アンテナを立ててしっかり知っておけば未来は明るい、「なんて……喜ばしい!」ですね。