はじめに
取っても良い価格変動リスク、取ってはいけない価格変動リスク
リスクにはさまざまな種類がありますが、ここではひとまず価格変動リスクに限定しましょう。その価格変動リスクでさえ、取っても良い価格変動リスクと、取らない方が良い価格変動リスクがあることに注意して下さい。
何が分かれ目になるのかというと、その価格変動リスクが投機によるものなのかどうかということです。
投資と投機の違いは、何に資金を投じるのかによって分かれます。
投資は、対象物が持つ付加価値の成長期待に資金を投じます。たとえば株式であれば、企業活動によって生み出される配当という付加価値の成長期待に対して、不動産であれば、土地の上に建てられている建物から生じる家賃収入という付加価値の増加期待に対して、資金を投じます。
これに対して投機は、価格変動そのものに資金を投じます。たとえばFX(外国為替証拠金取引)であれば、為替レートの値動きを捉えて資金を投じることにより、買値と売値の価格差を収益にします。そして、その基本構造は、貴金属やエネルギーなどのコモティティや、暗号資産も同じです。たとえば金(GOLD)などの貴金属は、価格こそ上下するものの、そこから利息や配当が生まれるものではありません。暗号資産も同じです。
ちなみに、土地だけを売買するのは、地価の値動きに対して資金を投じる「投機」ですが、その土地の上に建物を建て、その建物に入っているテナントや貸主から家賃を得るとするならば、それは純然たる投資と考えられます。
高齢者の運用に投機は不向き
投資と投機の違いを理解したうえで投機をするのであれば、それは別に非難されるようなことではありません。が、ここで年齢の問題が浮上してきます。
基本的に、投機性が強いものは、値動きのブレも大きくなりがちです。加えて、レバレッジをかけられるものが多いため、価格変動リスクはさらに増幅されます。結果、資産の大半を失うケースもあります。これだけリスクの高いものを、定年後の資産運用の中核に据えるのは、お勧めできません。20年、30年という時間が残されたなかで、保有している資産が半減、あるいは3分の1にまで目減りしたら、気が気でいられなくなります。
したがって、高齢者がポートフォリオにリスク商品を組み入れる場合は、あくまでも投資商品を対象にするのが無難です。具体的には株式、投資信託、不動産関連商品、あたりが妥当です。
もちろん、これらの中にも、さらに高齢者の資産運用に向いているもの、向いていないものがありますが、株式や投資信託、不動産関連商品は、配当利回りなどの利回り面を重視して選び、それをバブルピークのような高値で買わなければ、老後の資産運用には案外、適した特性を有しているのです。