はじめに
ガソリン価格が高騰している理由
1つ目の理由として、経済産業省は2022年1月から開始したガソリン価格の補助金を2023年9月末で終了すると発表した事です。このガソリン補助金の仕組みは、全国平均のガソリン価格が170円/Lを超えた場合、5円を上限に石油元売り会社に補助金を支給するという枠組みでスタートしました。
補助金支給の当初の理由としては、OPECプラスの減産維持の態勢が上げられます。
2021年後半からコロナ禍からの再起で世界的に経済回復の勢いが増し、原油の需要が増加していきました。それにも関わらずOPECプラスは減産を維持し、この事をきっかけに原油価格は30ドル台後半から70ドル台に上昇。それに伴いガソリン価格も高騰しました。
しかし補助金を開始した1ヵ月後にロシアがウクライナに侵攻した事により、原油価格が一時100ドルを越える状況となりました。これによりガソリン価格も高騰し、170円/Lをキープする為には、補助金を増額せざるを得ない状況となりました。
当初170円/Lを超えた場合、5円を上限にと謳っていましたが2022年6月、7月の補助金は40円を越えました。もし補助金が支給されていなければ、ガソリン価格は210円/Lを超えていました。原油価格が落ち着いた事で、政府は補助金を段階的に引き下げ、今年9月に終了する予定です。
2つ目の理由は円安です。日本は原油のほぼ全てを中東などの産油国から輸入しているため、為替の影響も大きく受けます。
足元では日米の金利差拡大から、円安が進んでいます。円安が続くと原油の仕入れ値が上昇し、ガソリン価格も引上げられる事となります。
ガソリン価格を巡る政府の動き
岸田首相は、急激なガソリン価格の高騰を受け、ガソリンの補助金の延長を行う方向に入ったとの報道があります。
しかし、補助金は私たちが納めている税金である事を忘れてはいけません。これまでのガソリン補助金制度で、既に約6兆円規模の財政資金が投入されたとみられており、延長されれば財政負担はさらに膨らみます。その財源は、税金や国債発行によって賄われており、将来更なる増税という事にもなりかねません。
ガソリン高騰を受け、今後EV(電気自動車)への関心が高まる事も予想されます。EV車も電気代が高くなれば恩恵はなくなりますが、脱炭素社会に向けて、活躍の場もありそうです。
政府は2024年度予算の概算要求で、脱炭素に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)分野に2兆円超を要求するとしており、その中でEV車向けの蓄電池やパワー半導体なども対象にしています。
ガソリンの高騰だけでなく、10月には酒類やソーセージ、調味料などを中心に約3,700品目が既に値上げをすることが決定しています。今後の景気の冷え込みが懸念されます。