はじめに
不動産バブル崩壊が懸念された理由
この不動産規制と住宅市場の下落によって、中国の不動産大手、恒大集団は銀行融資が制限される中で積極的な投資ができず、一方で過剰債務だった財務基盤がより悪化したことで、投資家の間では同社がデフォルトするのではないか、という噂が出回るようになりました。そして、2021年12月には実際にドル建ての公募社債の利払いを実施できず、デフォルトが現実のものとなりました。2023年8月にはニューヨークの裁判所に外国企業の破産手続きを調整する連邦破産法15条の提供を申請しました。
すると、同時期に不動産最大手の碧桂園が巨額の赤字見通しを発表し、同様に大手の遠洋集団もデフォルト懸念が報じられるなど、一気に中国の不動産バブルの崩壊を思わせるような報道が過熱しました。
中国政府はこれまでも景気が減速してくると巨額の財政出動をして危機を脱してきましたが、今回もこれまでと同様に巨額の資金を注入して不動産企業を救うのでしょうか。前述したように、住宅価格を釣り上げる環境を作った不動産企業に対して不満を表明していたことを考えれば、早々に助け船を出すとは考えにくいでしょう。しかし、一方で住宅を購入するために最初に購入資金を払ってしまった国民に対しては、何かしらの救済策を打ち出す可能性は高いと考えます。
リーマンショックの再来なるか?
さて、中国の不動産市場や不動産業界で起こったことをまとめてきましたが、今回の中国の一件はリーマンショックの再来となるのでしょうか。
リーマンショックは低所得者向けの住宅ローンであるサブプライムローンが金融工学を駆使して複雑な証券化商品となって世界中の投資家によって購入されていたことが原因でした。中国の場合は良くも悪くも自由な資本移動も認められていないため、恒大集団や碧桂園が同時に破綻したとしても、それによって世界中の金融機関の資本が大きく棄損するようなことは考えにくいです。
しかし、中国経済にとっては大きな打撃となることは間違いがなく、いまや世界第2位の経済大国となった中国の経済成長率が大きく減速すれば、世界経済にも下押し圧力がかかります。当然ながら地理的にも近隣である日本経済への影響はさらに大きなものとなるため、リーマンショックの再来にはならずとも、経済的には悪影響が生じることは覚悟すべきでしょう。