はじめに

会社員にとってもっとも重要な退職時の注意点

転職あるいは退職は、企業型確定拠出年金において最も注意が必要な時です。あとから後悔しないよう事前に確認が必要です。

まず企業型DCは、会社の制度であるがゆえに会社を辞めるとDCの資産をiDeCo等に移換しなければなりません。その際は必ずすべての金融商品を売却して現金として移換するというのがルールです。

従って、転職を考えている人、定年退職の際に全ての資金を引きだそうと考えている場合は、前もって株式投資信託など価格が上下しやすいものから定期預金など金額が変動しない商品に切り替えた方が望ましいでしょう。何もせずに会社の加入資格を喪失したら金融機関の指定するタイミングで全売却されます。

マッチング拠出をした分も、企業型DCの口座に入るので、例え個人拠出といえども会社を辞めると現金化されます。従って転職が考えられる人は、マッチングではなくiDeCoを併用しておいた方が運用の継続性が保てるので良いかも知れません。

会社によっては、短期で会社を辞めると「事業主返還」といって事業主が拠出した掛金について返金を求められたりすることがあります。これは会社を辞めたあとで、金融機関によって手続きが行われます。事業主返還があることを知らずにいると、いつの間にか自分のDC資産が減っていたということにもなりかねません。

例えば、勤続年数3年未満での退職の場合、事業主返還を行うというルールであれば、その期間を満たさず退職すると、事業主から受けた掛金を全額返金します。仮にその間に10万円の事業主掛金を受けていれば10万円が残高から差し引かれます。事業主掛金は10万円だったけれど、運用がうまくいかず5万円になってしまったという場合は、5万円を上限として事業主に返金します。

この事業主返還を設定するか、あるいは勤続何年にするかはそれぞれの会社が決定します。これは退職金を一定の勤続年数がないと支払わないという慣習がありそれを踏襲したものと言われています。

この時、間違ってはいけないのは、期間の設定は「勤続年数」であるということです。ある会社で、これを「加入期間」と間違って運用していたケースがありました。そこは、入社から一定期間経過しないと企業型DCの加入資格を得られないとしていたため、誤って事業主返還を求められた方がいらっしゃいました。

それについては、法律上「勤続年数」であることが定められているため、会社に間違いを指摘してもらいましたが、会社を辞める際に手続きに問題が起こるのはあまり気分の良いものではありません。

事業主返還を加入期間で判断すると、その会社に入社する前にiDeCoや企業型DCをしている社員については、その加入期間が通算されるため事業主返還というルールが効かなくなります。

そういう原理原則的な理由を理解せず、社内ルールだと思い込んでしまうとやはり間違いが起こってしまいます。確定拠出年金は複雑だと言われてしまうとそれまでですが、自分の身を守るためにも就業規則を良く読む、確定拠出年金のルールを理解するといったことはしておきたいものです。

企業型DCは、各会社独自の人事制度であるが故に、制度運用に個性が生じることも多々ありますが、資産形成の仕組み化を進める上ではとても重要な要素ですから、1人では難しいと思った場合はぜひファイナンシャルプランナーなどに相談してみていただきたいと思います。

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