はじめに

「まずはやってみること」も大事

有野:さっき話してはった、会社の成長を調べるのが大事、ってことはわかったんですけど、それってどうやって調べたらいいんですか?

三井:会社の基本的な情報や現在の状態をまとめている専門的な雑誌やサイトを見る手もありますが、まずはその企会社のサイトにあるIRページをチェックするのがいいと思います。IRは「Investor Relations」の略で、投資家に対する広報活動を意味します。IRページでは、「決算短信」という決算情報をまとめたものや「決算説明資料」、さらには投資家向けのニュースなどを見ることができます。

有野:新しいワードがいっぱい出てきた(笑) そういう資料を見たら、初心者でもすぐにわかるもんなんですか?

三井:数字やテキストが多い決算短信はともかく、決算説明資料は基本的に図表や画像などを用いて、どんな投資家向けにわかりやすく説明されています。なかには、その企業が属している業界やマーケットの動向を紹介しているものもあるので、さまざまな項目や要素を知ることができる重要な資料です。

有野:「資料」って聞くと、読むのが面倒になってまうねんなぁ。ゲームする時にも、説明書は読まないタイプやし(笑) 

三井:ゲームは説明書を読まずに、やって覚えるタイプの人も少なくなさそうですね(笑) ただ、ゲームはゲームオーバーになってもやり直せますが、株式投資では簡単に取り返せないほどの損をしてしまうと大変です。もちろん、ちゃんと調べたから必ず勝てるわけではありませんが、なにも調べないよりは上手にプレーできるでしょう。

有野:確かに、その通りですね。ゲームと違って実際に自分のお金が増えたり減ったりするわけですもんね。ちゃんとしないと。

三井:ゲームを買う時に、たとえば「この何本かのゲームのうち、一番楽しそうなのはこれ」など、発売前の情報を調べて買うソフトを選ぶことがあると思います。株を買う時にも、競合他社との比較や、業界全体の動向をチェックしたほうがいいでしょう。いくら現時点で調子がよくても、斜陽産業だったり、業界全体の調子が悪かったりすると、好調が長続きしない可能性もありますからね。

有野:昔のゲームは、ソフトのパッケージで「なんかおもしろそう」っていう理由だけで買って、プレーしてみたらクソゲーやった、ってことが少なくなかったなぁ。ゲーム誌が出てレビューを読んで買うか決めたり、今はネットの口コミでいろいろゲームの内容とか面白さが伝わってくるようになって、変なゲームを買わなくなりました。あ、これも一応調べてる、ってことになるわけか。

三井:ほかに、長期で保有するならその会社の財務状態もチェックしておきたいところ。もし、配当狙いで買うとして、財務の健全性が高ければ、多少業績が悪化しても配当を出し続けることが可能ですからね。

有野:それが一番心配やわ。ちゃんと見ておかないと、配当がなくなったり、株主優待がなくなったりしてるのに、気付かずに持ち続けてしまいそうやし……。でも、「財務の健全性」なんて調べても、よくわからんような気がします。「うちは危ないですよ!」なんて、どこの会社も言わないやろうし。

三井:厳密にいうと調べるポイントはたくさんあるのですが、たとえば返済の必要がない「自己(株主)資本比率」や「有利子負債」、「PBR(株価純資産倍率)」などが、競合他社と比べてどんな水準なのかを調べることが重要だと思います。ほかに、中長期投資でも相場や経済の大きな流れもチェックしておきたいですね。

有野:めちゃくちゃ調べなあかんことあるじゃないですか……先生、それって絶対、チェックしておかないとダメなんですか? 「まぁ、飛ばして次行こうか」ってのはダメ?

三井:う~ん、そうですね……。もちろん、すべてをチェックするのは大変ですが、ポイントを絞れば、そこまで大きな負担にはならないと思います。一番大事なのは、「楽しみながら投資をすること」。これは株式投資についてだけではありませんが、辛かったり、大きなストレスを抱えていたりすると、長続きしません。最初は調査や研究がストレスになるかもしれませんが、利益が出たり、配当や株主優待がもらえたりするなど、形として現れれば、楽しさを感じることができると思います。

有野:なるほど。確かに、最初のうちはあんまりおもしろくないゲームでも、やってるうちに楽しくなったりすることもあるなぁ。だから「まずはやってみること」ってわけですね。少額で失敗しながら、覚えて進むのが大事か。

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