はじめに
首都圏を中心に、都市部の不動産は高騰しています。投資家向けのビルやマンションも、表面利回りが5%を下回る不動産も珍しくない市況です。
そんな中、「せっかく不動産投資をする以上、もっと高収益・高利回りな物件にチャレンジしたい!」と考え、例えば利回り10%以上に絞って不動産情報を収集している方や、競売物件情報にアンテナを張っている方も少なくないと思います。
そして、高利回りな不動産の情報をたくさん集めていくと、一つの傾向が見えてきます。それは、ほぼ例外なく「古い」ということです。
これは、減価償却が進み、純粋な資産価値が低下している不動産である以上、「築浅な不動産に比べて、築古の不動産は売買価格が安くなる」のは当然の流れともいえます。一方、不動産投資においては、築年数の進行による賃料の下落は、売買価格の下落に比べて緩やかであることが多く、その結果、高利回りな築古物件が生まれやすくなっている側面もあるのです。実際に、投資用マンションの情報サイトを眺めると、利回り30%を超えるようなマンションが公開されていることもあります。
それでは、このような高利回りの築古不動産、特に居住用の区分マンション(分譲タイプのマンション1室)を購入して不動産投資をすることは、はたしてどの程度ハイリスクなのでしょうか。
今回は、築古・高利回りな区分マンション投資を検討されている方向けに、「そのハイリスクになりうる要素は、どんなものか」を、幾つかご紹介したいと思います。
築古のリスクは、物件資料には載っていない。
まず、築古マンションを検討する際、そのリスク判断が難しいとされている背景の一つに、「リスクが、物件情報にほとんど載っていない」ことがあります。
直感的に「そりゃあ、古ければ色んな不具合も出るだろうし、臨時出費を強いられるリスクもあるだろうな」と想像するくらいのことしかできません。たしかに、明らかな不具合や故障などが露呈していない限り、これ以上具体的にリスクを突き詰めるのは難しい側面もあるでしょう。
しかし、これではあまりにもリスク把握が抽象的になり、そのリスクが、利回りに対して(売買価格に対して)適正な転嫁がなされているのか、冷静な判断ができません。
そこで、以下のポイントを押さえておけば、現在その築古マンションがはらんでいるリスクや、今後生じうるリスクを、ある程度可視化することができるでしょう。
ポイント①水回りの更新時期
水回りは、建物の築年数と必ずしも一致しない”ブラックボックス”になりがちで、かつチェックを見落としがちな一つです。
オーナーチェンジ物件(既に賃貸入居中)の場合、水回りの劣化状態を直接自分の目で把握することは難しいかもしれません。しかし、浴室やキッチンといった水回り設備は、リフォーム工事の中でも費用が膨らみがちな対象の一つで、浴室交換だけで100万円近くになってしまった、といった事例も珍しくありません。投資規模やその貸室から得られる賃料収入額にもよりますが、この交換作業だけで、投資回収するのに1年以上を要してしまい、想定していた収支が大きく崩れてしまう場合もあります。
その意味で、現オーナーに対して、設備更新時期の確認を必ず実施しましょう。そして、これまでの修繕履歴として、いつ交換したか分からないほど昔の設備なのか、比較的最近のリフォームで更新したかが分かれば、次の設備更新時期や、より現実的な収支計画を立てることができます。
意外に、こういった設備更新は厳密に把握されていないことが少なくないため、「設備はボロボロなのに、外観が綺麗だから低利回りな物件」に出会ってしまったり、反対に「最近設備を更新したばかりなのに、外観が地味だから高利回りな物件」に出会えたりすることもあります。