はじめに
2017年10月22日(日)、品川・グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて開催されたイベント「お金のEXPO2017」。「“人生100年時代”にしっかり使えるマネースキルを」と題した本イベントは、ゲストスピーカーによる特別講演を始め、業界を代表する金融機関の専門家によるセミナーなどが行われ、人生設計、お金の使い方など、さまざまなお金のテーマについて学べる場となりました。
当日開催されたセミナーの中から本記事では、JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 重見吉徳氏、岡本桂一氏が語った「J.P.モルガンのストラテジスト直伝!低金利を生き抜く運用術」の内容をご紹介します。
相場の見通しで伝えたい3つのポイント
岡本: 皆さん、こんにちは。JPモルガン・アセット・マネジメントの岡本と申します。このセッションでは、J.P.モルガンの相場の見方、見通しと、今のような環境で、どういった戦略が選択肢になるのか、というお話をさせていただきたいと思います。
タイトルにある通り、世界中低金利です。アメリカは利上げを徐々に始めているものの、世界全体としてはまだ低金利環境が続いています。その中で、株価はすごい勢いで上がっているけれども、これからどうなるかよくわからない、と不安に思われている方も多いのではないでしょうか。
まず、弊社のグローバル・マーケット・ストラテジストである重見吉徳から相場の見通しについてお話をさせていただきます。
重見: 皆さんこんにちは。JPモルガン・アセット・マネジメントの重見です。
私の話は、大抵慎重な話です。なぜ私が慎重な話をするのかというのには理由が2つあります。
まずひとつに、慎重な見通しを立てることによって皆さんの頭の中のバランスを取りたいと考えているからです。資産運用も分散が大切ですが、やはり見通しもさまざまな見方、考え方、どちらかというと慎重な話をしてこういう考え方もあるんだよ、ということをわかっていただきたいと考えています。
もうひとつの理由は、皆さんご経験の通り、マーケットというのは時として急落します。そうした中を生き抜いていくためには、常に備えを持っていただくということが重要だと考えているからです。
私の師匠は今55歳で、東京でヘッジファンドを運用していますが、未だにこの金融市場で生き抜いてきています。その理由は何かというと、常にヘッジをしておくとか、備えを持ってすべてのリスクを解放しない、という形で、閉じるところは閉じておく投資をしているからです。だからこそ、現在まで彼は生き抜いてきていると私は考えています。
今日のお話には3つのポイント、メッセージがあります。
まず、ひとつめは、投資はまだ継続していただいても大丈夫ということ。そして2つめは、先ほど申し上げたように、少し慎重になっていただきたいということ。3つめは、利益確定できるところはしてください、ということを本日はお話させていただこうと思っています。
生き抜く術、そのためには備えが必要です。ではまず、マーケットの環境を最初に確認していただこうと思います。
景気拡大マーケットでの投資スタイル
おそらくこれが皆さんの頭の中にあるマーケットじゃないでしょうか。
左側のチャートは、実体経済とリスク資産価格が世界金融危機以降どのように動いてきたのかを示しています。まず見ていただきたいのは一番下のラインで、アメリカの名目GDPを示しています。
2008年9月にリーマンショックがありましたが、その後、2009年1月のアメリカ経済を100とすると現在は133.8なので、アメリカの実体経済は3割程度成長してきたと言えます。
一方、アメリカのREITや株式はどの程度上昇してきたのかを見ていただくと、同じタイミングを100とすると、実体経済は3割しか増えていないにもかかわらず、例えばアメリカのS&P500指数(緑)は3.6倍になっています。REIT(オレンジ)も4倍になっています。
リスク資産価格というのは、あくまでファンダメンタルズ(紫)に裏づいて取引をされます。ですから、私自身の考えとしては、リスク資産価格がちょっと上がりすぎているんじゃないかと考えています。
例えば日経平均株価は14連騰(2017年10月22日時点)しています。こんなときこそ考えておかなければいけないのは、下げに対する備えや先ほど申し上げたように慎重になること、あるいは利益確定していただくことです。
横ばい推移ではインカムを狙うべき
今後、リスク資産価格は大きく見れば横ばい推移が続いていくと私は考えています。アメリカの景気拡大は少なくとも1年ぐらいは続く可能性がありますので、大きく下がることはあまりないと思います。仮に大きな下げがあったとしても、例えばFRBが出てきて利上げは後にするという形で、低金利環境や緩和的な金融政策を続けることによってリスク資産価格は戻っていく。結果として、多くのリスク資産価格は大きく見れば横ばい推移になるのではないか、と考えています。
「横ばい」というと、投資先がないと思うかもしれません。
でも、そんなことはありません。横ばい推移になるということは、値動きを安定させたままインカムゲインを中心にとることができるんですね。株式の配当金や債券の利息などのインカムから利益を得ることができるんです。
上がらないと値上り益、つまりキャピタルゲインはなかなか期待できません。しかし、例えばアメリカのREITや株式、ハイ・イールド債券、または投資適格社債などでもいいのですが、どれもインカムが出ます。株式とかREITでいえば配当が出るわけですし、ハイ・イールド債券、投資適格社債でいえばクーポンが出るわけです。
ですから、今は値上り益を追求せずに、クーポンやインカムを中心として据えていただきたい。その中で、上がったらラッキーくらいで思っていただくというのが、今のこの上がりすぎているマーケットの中では重要な投資スタイルじゃないかと考えています。