はじめに
寄付と幸福度との関係
──寄付をして人にプラスの影響を与えている、社会に貢献していると感じることが自分の幸福度も向上させるんですね。「貢献欲を満たす」という観点はあまり考えたことがなかったかも。
実は他の人のためにお金を使う行為が幸福度に繋がるという話はエビデンスもあるんですよ。贈与や寄付などの行動が幸福度に与える影響の因果関係を調べたブリティッシュ・コロンビア大学とハーバード大学の研究です。
この実験では、参加者に朝、5ドルもしくは20ドルを与え、午後5時までに使うように指示しました。5ドルグループと20ドルグループはそれぞれさらに2つに分けられ、一つのグループは自分のために、もう一方はほかの人のために使うように指示されました。すると、5ドルもらったグループも20ドルもらったグループも、ほかの人のためにお金を使ったほうが、幸福度が有意に上昇したそうです。
5ドルか20ドルかという金額の違いは、幸福度の上昇に有意な影響を与えなかった。金額の大小にかかわらず、人のために使った方が幸福感を得られるという結果になったのです。
──面白い研究結果ですね。寄付という行為は人のためにお金を使っているように見えて、本当は自分の幸福感に繋がっているんですね。
そうなんですよ。だから「なぜ寄付をするのか?」という問いにはいろんな答えがあると思いますが、そのひとつとしては、ある一定の収入以上になると幸福感は頭打ちになるという研究もありますし、身の回りで必要なものも揃っている中で、もっと自分が幸せになるため、自分の人生を豊かにするためのお金の使い方として「寄付」を選択しているのかなと思います。
そう考えると、皆さんお馴染みの「ふるさと納税」も寄付なんですが、返礼品で何がお得にもらえるか、といったような自分のための軸で選ぶのではなく、その寄付金がどんな人のためになるか、どんな社会の実現に貢献できるか、ということをイメージして選べると、さらに有効なふるさと納税ができるのではないでしょうか。
例えば、私の所属しているフローレンスは、こども・子育て領域の社会課題を解決するために活動しているのですが、東京都渋谷区のふるさと納税の仕組みを使って、2023年12月末まで「こどもの体験格差解消プラットフォーム」構築にむけたふるさと納税型クラウドファンディングを行なっています。一般の方々や企業からふるさと納税を通じて寄付を募り、「こどもの体験格差」という社会課題を解消しようというプロジェクトです。
フローレンスは、経済的に厳しいご家庭や医療的ケア児・障害児家庭の支援を行なっているのですが、そうしたご家庭から、家族で映画を見に行ったり、外食に行ったり、といった普通のご家庭でできている体験の機会がないという声が多く寄せられています。いくつかの調査で、こども時代の体験の格差が、学力の格差や貧困の連鎖に繋がる可能性があるという指摘もあり、新たな社会課題として注目されているのが「こどもの体験格差」です。この社会課題解決のためにフローレンスを支援しようと、ふるさと納税の寄付先として選んでもらえたら嬉しいです。ふるさと納税なので、実質自己負担額2000円で寄付ができます(控除が受けられる金額には上限があります)。
──確かに、ふるさと納税は寄付の第一歩として良い手段かもしれないですね。