はじめに

物件次第だがマンションの固定費はチェックポイント

まず、Aさんご夫妻にお伝えしたのは65歳までの家計収支はどうなるのかです。年金を受け取る年齢は原則65歳ですから、それまでの5年間で貯蓄を取り崩すのであれば購入計画に無理があると思われます。確認したところ、妻の収入とAさんの企業年金でギリギリやっていけそうとのことでした。

第一段階はクリアしましたが、検討することは他にもあります。マンション暮らしになると住まいにかかる固定費が戸建てより高くなることです。毎月の管理費・修繕積立金・駐車料金、そして固定資産税を加えると、今より年間80万円以上負担が増えます。将来、車を手放すことになったとしても、マンションにかかる固定費は戸建てと違い自分でコントロールできません。今回、購入を検討しているのは40世帯ほどのいわゆる小規模マンションなので、毎月の固定費も高いのです。購入に向けて前のめりのAさんご夫妻でしたが、30年間の固定費総額を思い浮かべて冷静になられたようです。

「注文住宅の反省から、資産価値が高いマンションを購入すれば出口も安心だと思っていた。最終的に売却できることは重要だけど、果たしてその時に大金を手にしても意味があるのだろうか」と思われたようです。

率直なところ、今回のマンション購入計画は、価格自体にいささか無理がありました。物件選びは難しいところではありますが、予算を下げる、あるいは現在の住まいを断熱リフォームなどして住み続ける、そして、戸建て暮らしに不自由を感じるようになったらマンション購入か賃貸、さらには高齢者住宅の選択もあります。今すぐ決める必要はないこと、そして、Aさんも完全リタイアではなく今後可能であれば働く意思をお持ちとのこと、もう少し検討期間を設けることとなりました。

人生の最終ステージに向けて、終のすみか選びに悩むアラカン世代は多いものです。参考の一助になれば幸いです。

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