はじめに
夏のボーナスの使いみちについて考えるのが楽しい今日この頃。買い物や旅行などにつぎ込むのもいいですが、賢く投資をしてお金を増やす、という選択肢を考えている方も多いのでは。
そのような投資を始める方が事前に知っておくとよいのが、世界経済の動きや市場の現状についてです。6月18日、新宿にて開催された資産運用セミナーでは、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が「ボーナスで始める賢い資産形成」と題して、世界や日本のマーケット事情から、それらを踏まえた投資方法までわかりやすく解説しました。
世界の投資家たちの動向を知れる!?「VIX指数(恐怖指数)」
深野康彦氏:はじめに、VIX指数についてお話します。このVIX指数とは「ボラティリティ・インデックス(Volatility Index)」の略で、アメリカのCBOE(シカゴ・オプション取引所)が算出しているものです。日本語では「恐怖指数」と呼ばれています。世界の投資家がリスク回避に動くと数値が上がり、逆にリスクを負って積極的に動いているようなときは、数値が下がります。数値が20以下なら青信号。リスクをとって前向きに投資をしていくときです。20〜30%は黄色信号で、リスクを負う人と回避する人が半々くらいといったところでしょうか。そして、VIX指数が30%を超えると完全な赤信号です。
ここのところ、イギリスのEU離脱問題が「ブレグジットショック(※1)」と呼ばれ、話題となっています。日本の市場はその影響を受けて、円高・株安の状態です。
一方、VIX指数を見てみると、世界の投資家たちはブレグジットに対してそこまでリスクを感じていないようです。まだ20を少し超えたところなので、黄色信号に足を突っ込んだくらいです。
※出所:ブルームバーグ、毎週月曜日の終値ただ実際にリスク回避の傾向が強くなると、円・米ドル・スイスフラン、そして日本国債・アメリカの国債・ドイツ国債が買われるようになるので、どうしても日本は円高・株安になってしまいます。そして、その傾向がすでに見え始めているのは事実なのです。
円高・株安は避けられない? 世界と日本の経済動向
世界経済の動向と日本経済への影響
次に、今後の経済の見通しについてです。本日配布した資料に掲載したのは、IMF(国際通貨基金)が発表したものです。ほかにも世界銀行やOECD(経済協力開発機構)がこのような世界経済の展望を発表しているのですが、実はそれらすべてにおいて下方修正が行われました。そのなかでも、日本経済はかなり大きく下方修正されています。 ※出所:IMF、2016年4月12日発表値、修正幅は2016年1月19日公表分との比較
これは、世界的に経済成長のスピードが落ちてきていることを表しているのですが、そのせいで世界中の投資家が投資にブレーキをかけ始めました。経済成長が鈍化しているということは、それだけ株価も上がりにくくなっているということですから、意識しておきたいところですね。
そして、日本銀行が出した日本経済の見通しは、実質GDP、消費者物価指数のどちらも1月に発表されたものを、4月には下方修正することになりました。たぶん、7月もさらに下方修正されることが予想されます。
気になるアメリカとの関係性、政府の為替介入はほぼ不可能
また、円高が急速に進んでいて、一昨日1ドル103円台まで行きました。政府は為替が急激に動くようなら介入も辞さないと言っていますが、実際のところそれは難しいのではないかと思います。
それはアメリカがこれまでのように円安を簡単には容認しない姿勢になったからです。今年5月、アメリカは日本を為替の監視国に認定しました。つまり不当な円安でアメリカが不利益をこうむった場合は制裁を与えるということです。
その条件は、
1. 経常収支が対GDPの3%以上のプラスになる
2. 対アメリカの貿易利益が250億ドル以上
3. 上記2つの条件を満たした場合、二国間で是正の協定を結ぶ
というものです。いま日本は1と2の二つは満たしてしまっているので、協定を結んで是正しておかない限り、制裁を加えられてしまうわけです。
アメリカがこのように明確に表明しているので、状況を一変させるような為替介入はほぼ不可能だと思われます。ただ、日本は経済成長率が下がってきているので、政府が何か策を打たなければマズい状況です。秋に大規模な経済政策が実施されるという話もありますが、少なくともそれまでは日本経済は残念ながら停滞せざるを得ません。