はじめに
事例でみる投資型年金保険加入の適正バランスとは
前述の通り、投資型年金保険は運用実績によって受け取れる年金が変わります。そのため、どれだけ投資型年金保険で老後への生活に備えるかのバランスは慎重に検討すべきです。
投資型年金保険を複数契約している、あるご家庭の事例をもとに、投資型年金保険加入の適正バランスについて考えます。
【家族構成】
夫Aさん(会社員・42歳)、妻Bさん(パート・40歳)、長男(小学生・10歳)、長女(小学生・8歳)
【収入】
年間の手取り収入合計:年間約500万円
世帯の手取り収入額:年408万円(月34万円)
年間の世帯の手取りボーナス額:年70万円(年2回)
その他の収入:児童手当 年24万円(月2万円、子ども2人分)
【年間の世帯支出の目安】
生活費合計:年間474万円
(内訳)
生活費:年180万円(月15万円。食費・日用品費・通信費)
子ども費:年64万円
住宅費:年14万円(固定資産税・火災保険)
住宅ローン:年98万円(月8万1千円返済。ボーナス返済なし)
車輛費:年26万円(ガソリン代・自動車保険)
自動車ローン:年44万円(残り5年220万円返済)
保険料;年48万円(自動車保険・火災保険除く)
(内訳)
医療保険(夫Aさん名義):年6万円
医療保険(妻Bさん名義):年6万円
投資型年金保険(妻Bさん名義):年36万円(月払い3万円。Bさん)
※夫Aさんの投資型年金保険2本、妻Bさんの投資型年金保険2本は払い済み。
【世帯の資産状況】
普通預金:400万円
(既契約保険):
① 投資型年金保険(夫Aさん名義):120万円(一時払い。Aさん60歳から70歳まで毎年20万円受け取り)
② 投資型年金保険(夫Aさん名義):180万円(一時払い。Aさん65歳から75歳まで毎年30万円受け取り)
③ 投資型年金保険(妻Bさん名義):150万円(一時払い。Bさん60歳から70歳まで毎年30万円受け取り)
④ 投資型年金保険(妻Bさん名義):月3万円(月払い、70歳まで30年間払込み。Bさん70歳から85歳まで毎年120万円受け取り)
※①~④の投資型年金保険は、国内外の株式に約80%投資した積極運用コースを選択し、将来の年金額は運用実績によって変動する可能性があります。
Aさんご夫婦は、親の勧めで独身時代から個人年金保険に積立をしていました。しかし、契約時の利率が低いため、見直しをしようと思っていた矢先、たまたま紹介された保険会社の担当者に投資型年金保険を提案され、複数契約をしたとのことでした。
投資型年金保険は、利回りによって将来受け取る年金額も変わります。そのため、契約時に提示される利回りなどは、あくまでも参考程度と考えておく方がいいでしょう。
契約前に「お金のかかり時」を把握しておくことが大切
投資型年金保険は契約期間が長く、中途解約もしづらい商品です。途中で保険料が払えなくならないよう、「お金のかかり時」を把握しておくことが重要です。
Aさんご夫婦もライフプランを作成し、今後の収支をシミュレーションしたところ、子ども2人の高校入学から大学を卒業して独立するまでの期間が、「お金のかかり時」だとわかりました。子ども2人が大学生の時期には、投資型年金保険を除いた金融資産が300万円を下回ります。
シミュレーションでは、子どもが小学校から高校まで公立、大学は私立文系に進学することを想定しています。実際には、中学校や高校から私立に進学する、大学で理系に進学したり、一人暮しをしたりするなど、想定外の選択をすることもあるでしょう。その場合、さらに教育費がかかる可能性もあるため、手元資金が300万円を下回るのは心もとなく感じます。
子どもが小学生くらいまでは、一般的にはお金が貯めやすい時期だといわれています。まだ家計に余裕のある時期に保険加入を検討する場合、その時点での家計状況だけで大丈夫だと判断し、加入してしまうことがあります。長い人生のなかでは、どうしてもお金がかかる時期があります。加入時だけではなく、将来的にも保険料の支払いが継続可能か、長期的な視点で確認しましょう。