はじめに
60歳で定年退職を迎えると、健康保険の選び方に悩む人が少なくありません。退職後の健康保険料が家計の負担になるケースも多く、月に7万円もの支払いに頭を悩ます人も。この記事では、60歳でリタイアした後の健康保険料を抑えるための対策について、最新の情報を踏まえてご紹介します。特に、パートで働く妻の健康保険に夫が加入するという、意外な選択肢にも注目してみましょう。
退職後の健康保険の選択肢を比べる
60歳で定年退職した後の健康保険の選択肢は主に3つあります。①退職前の健康保険の任意継続被保険者制度、②国民健康保険、③家族の健康保険への加入です。これらの選択肢を詳しく比べて検討することが大切です。
任意継続被保険者制度は、退職前の健康保険を最長2年間続けられる仕組みです。保険料は退職時の月給(標準報酬月額)をもとに計算されるため、退職前の給料が高かった場合は保険料も高くなる傾向があります。
国民健康保険は、前年の所得をもとに保険料が計算されます。計算方法は自治体によって違いますが、一般的に退職の翌年の保険料は高くなる傾向があります。
家族の被扶養者になる選択肢は、保険料の自己負担がゼロになるため魅力的ですが、一定の条件があり、一般的にはハードルが高いといえます。
これらの選択肢を比べる際は、単に保険料の高さだけでなく、付加給付の有無、家族の加入状況なども考えに入れて検討する必要があります。例えば、健康状態に不安がある場合は、付加給付のある健康保険の任意継続被保険者制度を選ぶのも一案です。また、家族全体での保険料負担を考えて選ぶことが大切です。
パートの妻が厚生年金に加入し、夫が扶養に入る戦略
退職後の健康保険料を抑える効果的な方法として、パートで働く妻が厚生年金に加入し、夫が妻の扶養に入るという戦略があります。この方法は、世帯全体の保険料負担を減らせる可能性があります。
2024年10月以降、厚生年金加入の条件は、①週の決まった労働時間が20時間以上30時間未満、②月の賃金が88,000円以上、③2か月を超える雇用の見込み、④学生ではない、になります。厚生年金に加入すると、妻は被保険者となり、健康保険にも加入することになります。
夫が妻の扶養に入る条件は、60歳以上の場合は180万円未満(通常、年収130万円未満)です。この場合、夫は妻の健康保険の被扶養者となり、別に保険料を支払う必要がなくなります。
ただし、失業保険を受け取っている間は基本手当の日額が3,612円以上の場合、扶養には入れません。また、個人年金保険や家賃収入など継続的に生じる収入も扶養判定への影響があります。
年収以外に、①主に配偶者に生活を支えてもらっている、②配偶者の年間収入の半分未満である、といった条件もあります。逆をいえば、これらの条件を満たせば健康保険料の負担がゼロになるというわけです。