はじめに

「壁」を越える選択も必要

よく女性は年金が少ないと問題視されますが、それは先ほどお伝えしたように、そもそも昭和の家庭モデルにおいて女性は老齢期も男性に扶養されるのが前提なので年金は少なくても良いと考えられていたからです。Aさんの人生の目標がそこにあれば問題ありませんが、思いが異なるのであれば壁の内側に留まっていてはいけないのです。これはAさんに限らずすべての女性に関わることとも言えます。

女性の平均寿命が延び、配偶者が亡くなったあとの女性のお一人様期間が延びることにより、女性の貧困問題が取り沙汰されるようになりました。女性が受けられる遺族厚生年金は夫が受け取っていた老齢厚生年金の75%に過ぎないので、自分の年金が少ない女性は夫亡き後の暮らしが厳しくなるのです。

また離婚も増えました。女性の働く環境が改善されてきているとはいえ、賃金格差はまだ存在すると言われていますし、特に子どもを抱えたシングルマザーの働く環境は厳しく経済的困窮率が高いことは知られているところです。

このように何らかの理由から現役時代に年収が少ない、厚生年金加入期間が短いなどの要素があると、国民年金に上乗せされる厚生年金が少ないので、充分な年金が受けられない可能性が高くなっていきます。これは男性にも同じ事が言えます。また現役期の年収が少ないと、iDeCoやNISAといった税制優遇を使った資産形成制度も充分活用できないというジレンマも考えられます。

ここのところ社会保険の年収の壁、そして今回の税金の年収の壁について、できるだけ壁を超えた後もマイナスギャップがないようにという議論が継続されています。しかし壁を超えるハードルが低くなったとはいえ、簡単には年収を増やせない方もいるでしょう。もちろんそれは雇い側の問題もあるでしょうし、家族の理解が得られない、役割分担や価値観の相互理解が理由で働くことが難しい場合もあるでしょう。

しかし、将来の自分は今の自分の延長線上にあるのですから、しっかりと意識する必要があると考えます。家族での話し合いも重要ですし、ご自身も今できないからと諦めるのではなく、少し時間を長めにとった上でのプランニングも大切でしょう。例えば、数年後のキャリアアップのために資格取得をめざし今は勉強に集中するという選択肢もあるかも知れません。

壁というと、行く手を阻む物、超えるのが大変なことといったイメージがあるかと思いますが、折しも公明党と国民民主党が「年収の壁突破チーム」を設置し今後政策を協議していくと発表しました。ぜひ皆さんもご自身で、またはご家族で「年収の壁突破チーム」を設置しこれからの将来をどのようにデザインしていきたいのか、考えていただくのも良いのではないかと思います。

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