はじめに
3.相続土地国庫帰属制度の新設
相続登記を義務にしたものの「使い道もない、売れる見込みもないような要らない土地を相続するのは嫌だ」といった所有者の救済措置として、相続した要らない土地を、国が有料で引き取ってくれる制度が新設されました(2023年4月27日施行)。
これまでは、新たな買い手が見つからない限り、自分の子や孫などから反対されようとも強制的に相続させ、それを永遠に繰り返していくしか方法はありませんでした。そのため、こういった背景も、相続登記を敬遠し、所有者不明土地を生み出す温床として課題認識されていたのです。
しかし、この制度によって、有料ではあるものの「処分ができる」という選択肢を取ることができるようになりました。一方、国が引き取る審査基準は厳しく、審査が通らない土地も多いために評判はいまいちという側面もあります。しかし、不要な土地を相続した所有者にとっては有力な救済措置として、国としても所有者不明土地になる前に国有地化できるという点から、今後が期待されている制度です。
4.所有不動産記録証明制度
親名義の不動産が、全国のどこにあるか一括で確認ができる証明書を発行してもらえる制度が始まります(2026年2月開始予定)。
これまで、故人の親が不動産の権利書をきちんと保管していたならばまだしも、権利書を紛失している場合や、家族に伝えず所有していた不動産があった場合には、その不動産がどこにあるか把握することは困難でした。
そのため、災害や事故等をきっかけに、ある日突然「あなたは、〇〇の土地の所有者だ」と、寝耳に水のような便りが届いたり、相続登記義務化による過料を科されたりする可能性を払拭できない状況だったのです。
自分が知らない”親の所有している不動産”を見つける方法は、市町村役場の固定資産税を管理している部署へ、親名義の不動産一覧が見たいと申し出れば、名寄帳(なよせちょう)という書類で確認をすることができます。しかし、例えばA市役所で確認できる情報はA市内の不動産のみであるため、B市の不動産はB市役所、C村の不動産はC村役場…と、極論をいえば全国1741市区町村すべてに照会をかけなければ、もれなく確認することは不可能でした。
この制度が始まることにより、親がどんな不動産を所有していたか、相続登記が必要かなどの調査について、効率的に実施できるようになると期待されています。
一人一人ができること
所有者不明土地は、一見すると日常生活には縁のない「対岸の火事」とも思えますが、むしろ「明日は我が身」ともいえる深刻な問題です。
もしかすると、名前も聞いたことのないほどの遠い先祖名義で手続きが止まっていた不動産を突然相続することになることもあるでしょう。また、お隣から土砂が流出してきて困っているのに、隣地が所有者不明で、対処を求めることも、勝手に直すこともできないような場面に遭遇するなど、いつ所有者不明土地問題に巻き込まれても不思議ではない状況に直面しているのです。
このようなリスクから自分の身を守る意味でも、改めて家族・親族間で相続登記が終わっていない不動産がないかを話す機会を設けるなどして、早めの対策を講じることが非常に重要であるといえるでしょう。
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