はじめに
東京証券取引所が株式の最低投資金額を10万円程度に引き下げる方針を発表。これにより個人投資家は少ない資金で投資しやすくなります。政府の「資産所得倍増プラン」とも連動し、若年層や投資初心者の市場参入拡大が期待されます。本記事では、最低投資金額引き下げのメリット・デメリット、個人投資家が注目すべき点を解説します。
東京証券取引所、最低投資金額引き下げの方針発表
4月24日、東京証券取引所は株式の最低投資金額を10万円程度に引き下げるよう上場会社に求める方針を正式発表しました。現在は最低投資額は50万円未満とすることを努力義務としていますが、そこからさらに最低投資金額を10万円程度に引き下げるとのこと。売買単位(単元株)は引き続き100株単位を維持する一方、1株売買の制度化を検討する有識者会合を立ち上げている模様です。そうなると株式分割によって1株あたりの価格を下げ、100株単位でも最低投資額を10万円程度に抑える形が主流となる見込みです。
最低投資金額引き下げのメリットと影響
最低投資金額が下がると個人投資家は投資資金が少なくても買える銘柄が増えて分散投資もできるなどメリットが考えられますが、企業や市場全体にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
今こうした動きが求められていること、私たち個人投資家にはどのようなチャンスと課題があるのかなどお伝えしていきたいと思います。
現在、日本株の多くは「100株単位」で取引されています。例えば1株あたりの株価が5,000円であれば最低投資額は50万円ということになります。米国株は1株から買えることや、ETFで少額から分散投資できるものも多いことを比較すると投資初心者や若年層には日本株には手が出しにくい、ハードルが高い部分もあるのではないでしょうか。
確かに、プチ株やミニ株など、日本株も1株から購入できるサービスを提供している証券会社は複数見受けられます。また、東証公表データによると、投資単位が50万円以上の会社(高投資単位会社)の割合は近年10%を下回る水準で推移しています。資産形成に関心を持つ若年層が増えている中で、「新NISAを活用したいが、日本株は投資資金の面で手が出しにくい銘柄が多い」という声も聞かれます。
政府の「資産所得倍増プラン」と「投資大国」政策
政府としても岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」家計の「貯蓄から投資へ」のシフトを促進し、中間層を中心とした安定的な資産形成を目指すとしているものでしたが、具体的には、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充・恒久化や、金融経済教育の充実などを通じて、投資経験者の倍増や投資額の倍増を図ることが掲げられていました。それらにより個人の資産形成を後押しし、経済全体の成長と分配の好循環を実現しようとする政策は石破政権も継承しているように見え、「投資大国」の実現を掲げています。石破首相は、NISAやiDeCoの充実を通じて個人の資産形成を支援するだけでなく、国内外からの投資を積極的に呼び込むことで、産業全体への資金供給を強化しようとしています。
ただ石破政権は、財政健全化や「ワイズ・スペンディング(賢い支出)」の徹底を重視しており、岸田政権時代の大規模な補正予算編成からの転換を図っています。 加えて石破首相は過去に金融所得課税の強化に言及したことがあり、今後の政策動向によっては、投資家の行動に影響を与える可能性もあります。
とはいえ今回の東京証券取引所の最低投資金額引き下げは、岸田政権の「資産所得倍増プラン」と石破政権の「投資大国」政策の双方と整合性があり、特に投資初心者や若年層が株式市場に参加しやすくするための重要な施策といえそうです。