米テーパリング開始は早くて10月以降、雇用統計と当局発言から年後半のドル円相場を読む
米7月雇用統計直後はドル上昇、米国債利回り上昇
8月6日(金)に発表された米7月雇用統計は、事業所調査ベースによる非農業部門雇用者数(以下、NFP)が前月比94万3千人増と、事前予想中心値の87万人増に比べてかなり強い内容となりました。前月・前々月分は併せて11万9千人上方修正されました。新型コロナウイルスのデルタ変異株感染拡大が世界中で懸念されている中、2月分以降のレジャー部門を中心としたサービス業の堅調な雇用者増が引き続き全体の雇用増をけん引しています。加えて、8月は政府部門雇用者数が24万人増と、1~6月の月平均5万9500人増から大きく上振れしたことも影響したものと思われます。
日銀も動きだした、日本企業の気候変動対応は待ったなしの理由
企業収益に及ぼすインパクトは増大する可能性
昨年10月の菅首相の所信表明演説における2050年カーボンニュートラル宣言、及び今年4月に発表した2030年度の温室効果ガス排出削減目標で、日本は気候変動問題へのコミットメントを強化しました。これらの野心的な目標の達成に必要となる施策に関する議論が、足元において急ピッチで進んでいます。今回はその中でも特に重要とみられる分野、気候変動対応について、日本の対策を整理していきたいと思います。
日経平均は「年内に3万円回復」、日本経済が直面している“節目”とは
米金利の低位安定で米国株は高値更新へ
7月の世界の株式市場で、株価は比較的堅調な推移をたど辿りました。米国では主要株価指数が再び最高値を更新し、欧州でも独DAX指数が高値を塗り替えました。6月の米FOMC(米連邦公開市場委員会)直後には、米国での金融引き締め前倒しに対する警戒感から、世界の株式市場が一時的な動揺を見せる場面もありました。しかし、それが必ずしも米FRB(連邦準備理事会)のコンセンサスではないことが判明すると、米金利は低位で安定し、株式市場も落ち着きを取り戻しました。低金利下での今後の着実な景気回復への期待が、株価をもう一段押し上げたかたちです。一方で、日本を中心とするアジアの株式市場は、経済再開の遅れなどを理由に冴えない展開となり、株価は欧米のパフォーマンスに見劣りした状態にあります。ただ、こうしたパフォーマンスのギャップが、いわゆる「ワクチン格差」の結果としての「景気格差」によるものならば、いずれ、その問題は解消に向かうと見込まれます。ワクチン接種は時間さえかければ、遅れを埋め合わせることは十分可能で、「経済再開」は世界中に広がっていくと予想されるためです。今のところ、米FRBは急激な金融引き締めを回避する
日本株の悪材料はほぼ出尽くしか、夏枯れの今こそ“仕込み時”と読む理由
注目すべきは好決算を素直に評価できる相場になっている点
日経平均は本稿執筆時点の20日まで5日続落と冴えない展開が続いています。20日の日経平均は、前日のNYダウ平均が新型コロナウイルスのデルタ型の世界的な感染拡大懸念で700ドル超の下げとなったことを受けて、前日比264円安の2万7,388円と終値ベースで1月6日以来、約半年ぶりの安値に沈みました。もう7月も下旬で今年の後半戦に入っていますが、この半年の上昇分をすべて吐き出し年初の水準に逆戻りした格好です。盛り上がりを欠いたまま開幕を迎える五輪同様、まったく高揚感がないどころか、この日本株相場の動きには虚しさを覚えるばかりです。
東京五輪開幕直前、関連データを分析してわかった無観客開催でも期待できる景気へのマインド効果
6月景気ウォッチャー調査と五輪関連データ
7月12日から東京都に4度目の緊急事態宣言が発出されています。飲食業界・旅行業界を中心に5,000億円程度のマイナスの影響が出ると見込まれます。東京オリンピックはほとんどの会場で無観客での開催です。コロナ禍になる前は、オリンピック観戦にきた一般の外国人が、飲食、宿泊、観光などをすることで、4,000億円程度の経済波及効果を見込む向きもありましたが、一般の外国人の来日がないのでインバウンド需要はほとんどない状況です。コロナ禍という厳しい状況下で、緊急事態宣言によるマイナスとインバウンド需要喪失のダブルパンチを受ける飲食業界・旅行業界では、オリンピックの経済効果という言葉を出すと、「そんなものはない」として反発する人も多いでしょう。スタジアムなどの建設は経済効果が大きいものですが、去年までに終了していて、現在その効果は過去のものという感覚でしょう。しかし、世界中のトップクラスのアスリートが一堂に集い、全力で競うオリンピックは、人々の気持ちを前向きにします。スポーツの力のマインドに与えるプラス効果は大きいものがあると思います。コロナ禍で、アスリートの活躍に勇気づけられる人も多いのではないでし
米国の消費拡大はコロナ禍の反動だけでなく長期的にも期待できるワケ
コト消費、高額消費に強い回復を期待
2021年1~3月期(1Q)の米実質GDP(確定値)は前期比年率6.4%増と、前2020年10~12月期の同4.3%増から伸びが加速しました。GDPの最大部分を占める個人消費は、同11.4%増と、1960年代以降で2番目に大きく伸長。ワクチン接種の進展や米政府による現金給付等の経済対策が寄与しました。他にも住宅投資は同13.1%増と二桁の伸びが継続し、若い世代による世帯形成やコロナ禍によるライフスタイルの変化等から住宅購入が増加しています。なお、米連邦住宅金融庁が発表した4月の全米住宅価格指数(季節調整済み)は前年同月比で15.7%上昇と、統計のある1991年以降最高の伸び率でした。
米国の景気・金融政策は転換点だが株高は続く?データから読む“有望な投資先”
ISM製造業指数、金融政策、株価の関係を検証
新型コロナウイルスの新規感染者数は国内では再拡大が懸念されていますが、世界全体でみると鈍化の傾向にあり、変異株の動向を注視しつつ各地で経済再開の動きが進んでいます。特に米国では世界に先駆けて景気が回復し、代表的な企業景況感であるISM製造業指数は3月に64.7まで上昇しました。これは実に1983年以来の高水準です。ただ、その後のISM製造業指数は5月61.2、6月60.6と、横ばい圏での推移となっています。その他の経済指標も高止まりはしているものの、さらなる加速は見込みにくい状況です。<文:ファンドマネージャー 山崎慧>
今年後半のドル円相場はどうなる?重要なのは9月以降の米雇用統計
米6月雇用統計はまちまちの結果で相場は乱高下
7月2日に米6月雇用統計が発表されました。まずは、その内容を確認していきましょう。
もう逃れられない「脱炭素」、G7サミットで再加速した削減目標と政策方針をまとめて紹介
SDGsの観点から「オリンピック開催」宣言にも注目
G7サミット(主要7ヵ国首脳会議)は6月11~13日、2年ぶりとなる対面方式で英国コーンウォールにて開催されました。その共同宣言では「自由や平等、人権の保護などの力を使って挑戦に打ち勝つ」とし、台湾の重要性や、新しいインフラ支援の枠組み創設など「対中国」で結束。国際協調を重視するバイデン米大統領が主導する形で、民主主義主導のG7が再起動しました。
日経平均が一時1000円超の大幅下落、FRBが金融正常化に舵でドル円は今後どうなる?
コロナショックとリーマンショックの違い
21世紀になり、為替市場は大きな2つの危機を経験しました。リーマンショックとコロナショックです。前者が急激な円高をもたらした一方、後者はそれほどでもありません。その違いはどこにあるのでしょうか。そして昨日、日経平均は終値で2万8,010円と、前営業日比953円安の大幅下落となりました。この値動きには様々な理由が考えられますが、世界の金融市場がコロナショック以前に戻ろうとしていることが大きな要因の一つでしょう。今回は、リーマンショックとコロナショックの違いを明らかにするとともに、今後、円高リスクはないのかを検証してみたいと思います。
国内のワクチン接種回数が急伸、4~6月期GDPはマイナス成長になるとは限らない理由
最新データから見る、意外な景気の底堅さ
1~3月期実質GDPは、米国では順調に3四半期連続のプラス成長となりましたが、日本では2度目の緊急事態宣言下であったため、3四半期ぶりにマイナス成長になってしまいました。4~6月期も米国はしっかりしたプラス成長が予測されますが、日本は一部にマイナス成長を予測する声があるように、3度目の緊急事態宣言発出で飲食、サービスなど対面型の業種が大きく落ち込んでいます。日米のGDPの差は、日本が米国に大きく後れをとった、これまでのコロナ・ワクチン接種状況の違いによるところがあるようです。日本でも、5月下旬あたりからワクチン接種のペースが加速し始めたことで、先行きの景況感に改善の兆しが見え始めました。
足もとの物価上昇に慌てるなかれ、米金融緩和縮小は“秋以降”と読む理由
CPIの上昇は新型コロナによる一時的なもの
5月12日に発表された4月の米消費者物価指数(CPI)は、前年同月比4.2%上昇と、市場予想の同3.6%上昇を大幅に上回りました。これを受けて市場には動揺が走りました。インフレが「懸念」から「現実」のものとなりつつあると警戒感が高まり、米国の長期金利は7bpsも上昇し1.7%前後になりました。長期金利の上昇を受け、株式市場ではハイテク株が急落しました。ダウ工業株30種指数、S&P500種株価指数、ナスダック総合指数の主要3指数は、そろって大幅続落となりました。
ついにコロナ相場も終焉か?2021年後半の投資先・資産配分を考える
各国当局が探る緩和縮小の道
2020年5月は、3月のコロナショック後に2番底が来るか?と警戒されたのも束の間、株価は急上昇となりました。しかし、今年の5月は前半から荒れ模様となっています。月初から好調であったNYダウは35,000円の大台に到達した5月10日を境に急落、日経平均も米国を震源とする世界的な株安につられ、29,000円台半ばから一時年初来でマイナスとなる27,000円台前半まで下落しました。今年の後半はアフターコロナを見据えた相場へと向かうのでしょうか。米国と日本の景気状況と相場の需給の観点から見ていきたいと思います。
円が最弱通貨になる!?FRBのハト派姿勢継続で為替相場に懸念されることとは
ポイントは国際商品市況
一般的に、政府と中央銀行は利害が時に一致しないことがあり、それ故に中央銀行の独立性が重要であるとされています。政治家は選挙目当てに目先の景気浮揚を求めがちである一方、中央銀行の使命は主に物価の安定です。政治が金融政策に介入すれば、物価安定が阻害されかねず、経済や金融の安定にとって長期的なリスクを引き起こす可能性がこれまで指摘されてきました。かつて、米連邦準備制度理事会(FRB)の第9代議長(1951~70年)を務めたウィリアム・マーティン氏は、「FRBの仕事はパーティーが佳境に入ったタイミングでパンチボウル(お酒の入った大きなボウル)を片付けること」と語ったという逸話が残っています。景気過熱による物価上昇を未然に防ぐことが中央銀行の使命という比喩であり、敢えて憎まれ役を買って出るというFRB議長としての矜持が感じられます。
景気引き締め?景気支援?まだら模様な政策を展開する中国当局の真意とは
不均衡な回復に苦慮
3月に開催された全人代(全国人民代表大会)で中国当局は、今年の方針として政策の急転換を避け、景気の安定化を最優先する姿勢を示しました。一方で、当局は景気支援策を打ち出しながらも景気に悪影響を及ぼしうる政策も相次いで発表しており、その動向からは当局の意図が分かりにくい状況となっています。中国当局の真意はどこにあるのか、足元の中国景気と政治スケジュールから探ります。
バイデン政権はドル円相場に興味ナシ?政治的なノイズが薄れた為替相場の行方
ドルの上値トライはこれからが本番か
為替市場参加者の中には、「ドルのレートは米国の為替政策によって決まる」という見方をする人も少なからず存在します。そこで今回は、政権交代によって米国の為替政策がどう変わったのかを確認し、ドル円相場の行方を予想してみたいと思います。
「まん延防止措置」はマイナス「大相撲懸賞」はプラス…明暗入り混じる日本経済の今
早い桜の開花は景気の下支え要因に
コロナ禍であるものの、「景気ウォッチャー調査」などの足元の景況感は、ワクチンへの期待もあり比較的底堅く推移しています。様々な身近なデータをみると、明暗が分かれており、営業自粛の影響を受けている業種を中心にした雇用面のデータなどは要注視な状況です。しかし、刑法犯の認知件数、遺失届現金に対する拾得届現金の比率などからは社会の落ち着きや、春場所の大相撲の懸賞などからは景気の底堅さが感じられます。また桜の開花が早かったことも、心理面から景気の下支え要因になっているようです。様々なデータが示す日本経済の「明」と「暗」、詳細をみてきましょう。
バイデン大統領のインフラ投資案は予想外に小型化、株価への影響は?
2兆ドルだが公約の4年ではなく8年
バイデン大統領は3月31日に「アメリカンジョブズプラン」という総額2兆ドルあまりのインフラ投資計画を発表しました。期間は8年間としています。今回は、政策の主な内容について解説します。<文:ファンドマネージャー 山崎慧>