日本株市場への強気シナリオを維持する“3つの根拠”
2018年後半の投資戦略
本日からMarket Plusの執筆に参加させていただく、アセットマネジメントOneの柏原延行です。どうぞ、よろしくお願いします。私は昨年末時点で、(1)2018年には「適温経済・相場」は終焉を迎え、これを悪材料として比較的早い時期にわが国株式市場は安値を取る。そして、その後に、(2)適温経済・相場は終焉を迎えるものの2017年よりも投資環境は改善し、わが国の株式市場は一般的な想定以上に上昇する、と予想していました。7月10日に米国が新たに2,000億ドル(約22兆円)に相当する品目への制裁関税の追加措置案を公表したことなどを受けて、貿易・知財をめぐる米中の対立、いわゆる貿易戦争が一段と激しくなるとの論調が、各種メディアでは目立つように思われます。しかし私は、年後半に向けて、わが国の株式市場が上昇するという見方は変更していません。今回は、この予想の理由をご説明したいと考えます。
米中貿易戦争開戦、そのとき中国金融市場はどう動いた?
注目すべきは「外より内」
7月6日、トランプ政権は340億米ドル相当の中国製品に対して25%の追加関税を発動し、米中貿易戦争における最初の実力行使に出ました。これに対して、中国は即座に反撃し、同額の米国製品に対して同率の追加関税を発動しました。今回の関税発動をきっかけに、米中貿易戦争は新たな局面に入り、今後両国の出方次第で報復の応酬が更にエスカレートする可能性があります。 米中貿易戦争を巡る緊張感が高まる中、中国本土の代表的な指数である上海総合指数と深セン総合指数の年初来騰落率はそれぞれ▲14.9%と▲17.1%と、他の主要国の指数と比べて特に株価パフォーマンスの悪さが目立っています(年初来騰落率は7月9日時点)。今回は中国本土株式市場の株価が大きく下落した要因と見通しについて考えてみたいと思います。
米中貿易チキンレースに号砲、金融市場への影響は?
強い米6月雇用統計がドル下支え
3月に米国が輸入鉄鋼・アルミニウムに関税を賦課する決定を下して以来、事あるごとに「米中貿易戦争懸念」は円高・株安の材料となり、円高論者の主張の論拠とされてきました。しかし、足元のドル円は堅調に推移しています。強い米景気指標と年4回の米利上げ見通しによって、世界(米中)貿易戦争勃発の可能性を吹聴していた円高論者の勢いが減殺されたといえるでしょう。
週末に整理しておきたい「AIを活用した投資手法」の仕組み
これを読めばAI予測の構造がわかる
最近はAI(人工知能)を使った株価予測や投資モデルが登場していますが、これらを使うには、AI予測の特徴を知っておく必要があります。とはいえ、こんな話題だと「自分にはちょっと難しいかも」と思ってしまう方もいるかもしれません。しかし、これから私たちの周りでAI化が進んでいきます。投資の世界も同様です。今回はAIの投資モデルを整理して、どのような流れで予測値が出てくるのか、考えたいと思います。
森長官の置き土産?金融庁が打ち出す「大変革」の本気度
改革すべき中心課題は2つ
7月4日、東京・霞が関にある金融庁内の記者会見室は、いつになくざわついていました。この日の午後に開かれる予定の記者向けブリーフィングのタイトルが、かなりセンセーショナルなものだったからです。「金融庁の改革について―国民のため、国益のために絶えず自己変革する組織へ―」いったい金融庁は何を改革するというのか。異例の任期3年を務め、近く退任すると報じられた森信親長官と、何か関係があるのか――。報道陣はさまざまな想像をめぐらせていました。しかし、実際に金融庁から公表された内容は、さまざまな意味で報道陣の想像を裏切るものでした。同庁が打ち出した改革の中身とは、どんなものだったのか。そして、このタイミングで公表した理由は何なのか。資料とブリーフィングの内容から、ひも解いてみます。
「男の沽券にかかわる」の沽券に含まれる経済的な意味
お金のことば29:沽券
アニメ「クレヨンしんちゃん」に「男の沽券(こけん)にかかわるゾ」というエピソードがあります。しんちゃんのパパ・ひろしが、ママ・みさえに「座ってトイレを使うように」と要求され、「男の沽券にかかわる大問題だぁ!」と反論するところから始まるエピソードです。そこでしんちゃんも、すかさず「そうだ股間に毛がある!」とボケる流れでした。これはあくまでアニメの台詞の話ではありますが、確かに幼稚園児にとって沽券という言葉は聞き慣れないものですよね。いや、幼稚園児だけでなく実は大人にとっても、沽券は難しい言葉であるように思います。そもそも「沽」という文字を、沽券以外の言葉で滅多に見かけません。また沽券が「人や組織などの価値や体面」を意味することは知っていても、その由来については知らない人が多いのではないでしょうか。沽券に「券」と書いてあるからには、実際、沽券は「券」なのです。そして本連載が取り扱う話題ですから、その券には、もちろん「経済的な意味」も含まれています。今回は「沽券」という言葉の成り立ちを探りましょう。
株式市場の波乱を先読み?“ある指数”の動きに要注意
くすぶる「不確実性」リスク
米国のドナルド・トランプ大統領の一挙手一投足に世界が振り回されています。6月にカナダで開かれた主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)では、保護主義的な通商政策を推し進める米国と、それに異を唱える他国が対立。史上初の米朝首脳会談に臨むためサミットを途中で切り上げた同大統領は、会談が行われたシンガポールへ向かう専用機の中から首脳宣言を受け入れないとする内容のツイートを投稿しました。ツイッターではホスト国カナダのジャスティン・トルドー首相も強く非難。同首相がサミット後の会見で、米国の鉄鋼・アルミ製品に対する関税措置などを改めて批判したのに対し、「不誠実で弱虫」とこき下ろしました。
「経済サプライズ指数」の急落は相場一変の“前奏曲”か
貿易摩擦悪化で中国は大丈夫?
各国の経済指標が、市場予想を軒並み下回り始めました。緩やかな景気回復と低金利が作り出した「適温相場」の余韻も、いよいよ終わりに差し掛かっているのでしょうか。
気迷いムードのドル円相場、今後のメインシナリオは?
軽視できない日米欧金融政策の差異
今年のドル円相場を振り返ると、年初から円高に振れましたが、3月下旬以降は円安基調に戻っています。もっとも、ドルの上値も限定的で明確な方向感が定まっていません。市場の見通しも円高派、円安派に分かれ、コンセンサスがない印象です。こうした気迷いムードは投機筋のポジションにも表れています。今後、レンジ相場は円高、円安どちらに抜けるのでしょうか。
衆院委を通過、「カジノ法案」が生む経済的意味とは?
いったい誰がどう儲かるのか
日本にカジノを中核とする統合型リゾートを建設する、通称「カジノ法案」が6月15日、衆院内閣委員会で賛成多数で採決されました。今後、衆参両院の本会議を通過できるかどうかはぎりぎりのタイミングです。一方、法案が具体化されたことで、いよいよ日本でもカジノビジネスが始まると期待する向きもあります。このカジノ、いったい誰がどのように儲けるのか、ビジネスチャンスの仕組みを解説したいと思います。
イタリア政局混乱に見る「市場のストーリー」の脈略のなさ
個人投資家はどう向き合うべき?
5月末、南欧発のリスクオフ(回避)の波がマーケットを揺らしました。欧州の株式市場やユーロが売られたのはもちろん、米国のNYダウ平均も一時500ドルを超える急落となりました。むろん、動揺は日本にも及び、大幅な株安・円高となりました。一体なぜ、金融市場はそこまで揺さぶられたのでしょうか。そして、個人投資家はどう対処すべきだったのでしょうか。検証してみたいと思います。
金融市場を揺るがす「南欧政治リスク」の実情
欧州危機は再来するのか
ここにきてイタリアなど南欧の政治リスクがにわかに注目を集め、ユーロの下押し圧力やリスク回避の円高材料となる場面がみられています。これまでの経緯と今後のポイントについて考えてみたいと思います。
日本の運送料から考える「米長期金利」の先行き
一見無関係な2つの事象を読み解く
先日、ニュースを読んでいて目についた記事が2つあります。1つは先日発表された日本の消費者物価指数についてです。大手宅配業者の値上げの影響で、運送料が上昇し続けているというもの。もう1つは最近の米国金利の上昇についてです。一見、何の関係性もない2つの記事ですが、実は見方によっては米国金利の行方を予想するために重要なヒントを与えてくれるのです。
地方選挙で国政与党が圧勝、「インド株」の投資妙味は?
「モディノミクス」は盤石か
マレーシアの電撃的な政権交代があった5月。その裏で、インドでは今年最も注目されるイベントの1つ、カルナータカ州議会選挙が実施されました。日本人にとっては、カルナータカ州という地名よりもバンガロールという地名のほうが馴染みがあるかもしれません。インド南部の同州は、ハイテク産業が盛んな「インドのシリコンバレー」、バンガロールを州都に構えるインド主要州の1つです。ただ国政において、カルナータカ州はいち地方にすぎません。そんな地方の州議会選挙が世界的に注目された理由はなぜでしょうか。カルナータカ州議会選挙を通して、インドの現状を見ていきましょう。
ザッカーバーグが載ってない!?広辞苑「人名」掲載基準の謎
お金のことば24:広辞苑・第七版(後編)
『広辞苑 第七版』(2018年1月発売開始)で新たに登場した経済ワードを紹介する記事の後編です。前編では、投資の言葉(外国為替証拠金取引)、経済史の言葉(サブプライムローン)、CSRの言葉(三方良し)を紹介しましたが、この他にどんな経済ワードが新登場したのでしょうか?
最新版『広辞苑』から眺める、最近10年の経済事情
お金のことば23:広辞苑第七版(前編)
朝ドラ、上から目線、がっつり、小悪魔、加齢臭、婚活、自撮り、無茶振り、アプリ、エコバッグ、サプライズ、スマホ、デトックス、パワースポット、リスペクト、レジェンド、マタニティーハラスメント――さて、これらの言葉に共通するポイントは何でしょうか?今年1月13日、岩波書店は『広辞苑』の最新版となる第七版の発売を開始しました。前述の言葉は、その広辞苑・第七版で新たに採録された項目を一部抜粋したものです。後ほど詳しく述べますが、広辞苑の新版が登場するのは「ほぼ10年に一度」のこと。ということは、以上で登場したキーワードは、ここ10年の間に世間に浸透したキーワードである(そのように編集部が判断したキーワードである)とも言えるのです。さて、当然のことながら広辞苑には「経済用語」も載っています。ということは、第七版で新しく登場した経済用語を観察することによって、おおよそ最近10年間の経済動向を振り返ることも可能かもしれません。今回は「広辞苑・第七版で新登場した経済用語」を特集しましょう。本稿はその前編です。
初の政権交代、「マレーシア経済」の行方はどうなる?
マハティール氏が返り咲き
5月9日、マレーシアでは下院(代議院)選挙が行われ、マハティール元首相率いる野党連合の希望連盟(PH)が与党連合の国民戦線(BN)を破り、総議席数の過半数(222議席のうち122議席)を獲得しました。下院選挙の結果を受けて、マレーシア独立後初となる政権交代が実現し、マハティール氏は2003年以来15年ぶりに首相の座に返り咲きました。今回は、マレーシアの政権交代後の経済見通しについて考えてみたいと思います。
貿易摩擦問題は“オオカミ少年”で終わる?
米中の貿易摩擦問題を考える
米中の貿易摩擦問題をめぐるドナルド・トランプ米大統領の発言を振り返ると、イソップ寓話に出てくる「オオカミ少年」を思い起こさせます。貿易戦争(注1) への進展を連想させる発言を繰り返しながらも、一方で、深刻な事態には至らないような動きも垣間見えます。当初はこの問題に衝撃を受けた市場関係者も、実際には深刻な事態にならないのではと思い始め、次第に過激な発言に慣れていく状況が「オオカミ少年」と類似しているようです。トランプ大統領の当面の目標は、11月6日の米中間選挙(注2) で勝つ(共和党が勝利する)ことでしょう。そのため、「中国によって米国内産業が痛めつけられ、貿易赤字が膨らんでいるほか、知的財産権なども侵害されている。よって、国内産業を保護する姿勢を強めれば、共和党支持が増えるだろう」と目論んでいる可能性はあります。3月1日には、中国製品を念頭に鉄鋼とアルミに追加関税を課す方針を表明。3月22日には、最大600億ドル相当の中国製品に制裁関税を課す大統領令に署名。4月5日には、1,000億ドル相当の中国製品への追加関税の検討を米通商代表部(USTR)に指示するなど次々と強硬策を打ち出し、中国