米国金融市場の混乱と円高の行方
金利・株価の乱高下は今後収束へ?
2月半ばにかけて米10年国債利回りが約4年ぶりの2.9%台に急上昇し、NYダウ平均株価も1,000ドル単位の上げ下げを繰り返す中、為替市場ではリスク回避を理由に“安全通貨”とされる円やスイスフランが全面高となりました。この間、平常時ならばドル買い要因となりそうな強い米経済指標や米金利の上昇、円売り要因となりそうな黒田東彦・日本銀行総裁の続投による金融緩和継続期待などもありましたが、市場はこれらを材料視せず、ドル円も一方的なドル安円高が進むと、約1年3ヵ月ぶりとなる1ドル=105円台半ばまで下押す場面がみられました。いったい市場に何が起きたのでしょうか。そして、このような動きは今後も続くのでしょうか。
「2019年増税」の確度が高まった安倍政権の“ある動き”
経済対策“早期とりまとめ”の意味
2月は、アベノミクスの先行きを決定づける“想定内の動き”と“想定外の動き”がありました。日本銀行の人事案は想定内でしたが、消費増税後に備えた経済対策の早期とりまとめ方針は想定外でした。10%への消費増税は再々延期ではなく、予定通り実施される見込みです。経済対策を早期にとりまとめるのは、霞が関の立場では安倍晋三首相の増税決断を後押しするためでしょうし、安倍首相の立場では今年秋を中心とする改憲スケジュールに集中するためでしょう。
「工場」から「製造強国」へ、中国企業に何が起きているのか
深圳A株から大化け企業も?
近年、中国政府のハイテク推進の流れが顕著になっています。数年前までは「世界の工場」としての存在感が際立っていましたが、成長率の鈍化や人件費の上昇などによって、これまでの成長モデルが通用しなくなっています。そのような状況を打開すべく、中国政府の打ち出した政策が「中国製造2025」です。ハイテク大国として、新たな成長モデルを模索し始めている中国の直近の変化を探ってみましょう。
上向き目線は維持? 米国株の見通しに変更は必要か
株価急落から2週間が経過
良好な新年のスタートを切った1月とは対照的に、2月の世界の株式市場はいきなり米国株の急落に遭遇しました。2月2日に発表された米雇用統計を受けて、NYダウ平均株価は前日から665ドルも下落し、株式市場に動揺をもたらしました。その後も乱高下を繰り返した米国株は、NYダウが1月26日の高値(2万6,616ドル)から、2,700ドル以上も値下がりする場面がありました(終値ベースでの比較)。足元の株価は昨年末水準を再度上回ってきていますが(年初来の騰落率はプラスに転換)、今回の相場変調をどうとらえ、今後の相場をどう予想したらよいのでしょうか。これまでの相場下落の経緯とこの先の展開を、改めて整理したいと思います。
カモからの借金を、ネギからの借金で返す話
お金のことば10:ポンジスキーム
「ある水曜日、サギ君は5万円が必要になりました。そこでサギ君は、昔からの友人であるカモ君にこう持ちかけました。『5万円を貸してくれない?次の土曜日には返すから』。こうしてサギ君は、カモ君から5万円を借りることができました。ところがサギ君は金欠が解消しないまま土曜日を迎えてしまったのです。そこでサギ君は、やはり昔からの友人であるネギ君にこう持ちかけました。『5万円貸してくれない?次の水曜日には返すから』こうしてサギ君はネギ君から5万円を借り、カモ君には5万円を返しました。しかしサギ君の金欠はまだ解消しません。そこでサギ君は次の水曜日にカモ君を呼び出して……」これはベンガル人作家チャクラボルティの短篇『カネが必要なら借りろ』の冒頭を筆者が独自に翻案したものです(参考:日経サイエンス2014年9月号「経済に潜むポンジ詐欺」)。物語はこのあと水曜日のやりとり(カモ君から借りた5万円でネギ君からの借金を返す)と土曜日のやりとり(ネギ君から借りた5万円でカモ君からの借金を返す)とが不毛に繰り返されることになります。しかしある出来事で物語が急展開するのですが……続きは後ほど。今回の記事では、この物語
日銀・黒田総裁「続投」報道にマーケットはどう動く?
住宅ローン借り換えも検討すべきか
先週末、「日銀・黒田総裁が続投へ」というニュースを各メディアが一斉に報じました。安倍晋三首相が、4月8日に任期満了となる日本銀行の黒田東彦総裁を続投させる方針を固め、月内にも国会に提示する、という内容でした。黒田総裁の続投というニュースはメインシナリオでしたので、大きなサプライズはありませんでした。しかし、さまざまな噂が飛び交っていた中から1つのシナリオに絞られたとなれば、影響は各方面に広がっていきそうです。続投の背景には何があり、今後の経済・市場にどんな影響がありそうなのでしょうか。そして、私たちはどのように備えればいいのでしょうか。
今年は何が起こる? 2018年の経済予測ワード
お金のことば6:GDP、3つのIなど
早いもので2018年が始まってから、もう3週間が経とうとしています。マスコミ各社が年末年始に発信する経済予測の記事も、そろそろ出尽くしたタイミングではないでしょうか。言葉の観察が生業(なりわい)である筆者としては、このような予測記事も貴重な観察対象となります。記事のなかに「経済予測ワード」がよく登場するからです。例えば前回の記事で紹介した「ゴルディロックス相場」(適温相場)という表現もそのひとつ。また相場格言である「戌(いぬ)笑う」(戌年の相場は活気づくという経験則)もよく見かけました。そしてこの種の「経済予測ワード」のなかには、記者・識者などが作ったオリジナルの造語もあります。そこで今回は年末年始のメディアで登場した「2018年の経済予測ワード」をいくつか紹介しましょう。
「適温相場」の行方を「熊と少女」の物語で占う
お金のことば5:ゴルディロックス
ここ最近、国内外の経済系メディアで「ゴルディロックス」という言葉を見聞きします。ゴルディロックス経済とか、ゴルディロックス相場などの表現がよく登場するのです。例えばここ1ヶ月以内の記事に限っても「ゴルディロックス的なマーケット環境が変わる感じはないが」(ロイター2018年1月3日)とか、「『ゴルディロックス(中略)状態』が続くとみる投資家は54%」(日本経済新聞2017年12月19日)といった表現を見つけることができます。実はこの言葉、英国で発祥したある「童話」が語源なのだそうです。果たしてゴルディロックスとは一体どんな意味なのでしょうか。そして各種メディアで囁かれているゴルディロックス相場の行く末は、どうなるのでしょうか。筆者の専門分野は言葉ですので、強引に「言葉の観点」から相場の未来を占ってみましょう。
2018年米国株相場を乗り切る2つの投資戦略
史上最高値を更新中、米国株の成長は続くのか?
好調な経済やトランプ大統領の減税政策に支えられ、NYダウ平均株価は史上最高値を更新し続けています。2018年もこの傾向は続くのでしょうか。アメリカの株式市場に詳しいJ.P.モルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト 重見吉徳氏に、今後の米国株の行方と、個人投資家が取るべき投資戦略について話を伺いました。
ドル安下での円高に警戒、2018年の為替相場見通し
平和な相場が2年続いた例はない
2018年相場が始まりました。2017年は株式市場の躍進やビットコイン急騰に沸いた一方で、為替相場への注目度が低い1年でしたが、新しい年のマーケットはどうなるのでしょうか。為替相場に詳しいみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔さんに、18年のドル円相場の見通しについて話を伺いました。
年明けがヤマ場、「日銀総裁人事」は暮らしをどう変える?
“次期総裁レース”は大混戦
第2次安倍晋三内閣が進めてきたアベノミクスの下で、日経平均株価は2012年秋の9,000円前後から2017年11月には一時、2万3,000円台まで上昇しました。景気回復局面も5年間となり、戦後2番目の長さとなっています。この間の金融政策を支えてきたのが、2013年3月に就任した日本銀行の黒田東彦総裁です。総裁の任期は5年のため、2018年の4月には次期総裁が就任することになります。安倍首相は年明けにも次期日銀総裁を誰にするか決断する、ともいわれています。株価だけでなく日本の経済全体、ひいては私たちの暮らしに大きな影響を与える金融政策は、後任の日銀総裁の下でどのようになるのでしょうか。
投資とは、経済の本質「分業」に自らが主役として関わること
世界のことを知り、楽しく資産運用を
2017年10月22日(日)、品川・グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて開催されたイベント「お金のEXPO2017」。「“人生100年時代”にしっかり使えるマネースキルを」と題した本イベントは、ゲストスピーカーによる特別講演を始め、業界を代表する金融機関の専門家によるセミナーなどが行われ、人生設計、お金の使い方など、さまざまなお金のテーマについて学べる場となりました。当日開催されたセミナーの中から本記事では、マネックス証券株式会社 取締役会長 松本大氏(現・代表取締役社長)が語った「これからの資産運用〜新しい時代に起きていること〜」の内容をご紹介します。
株式市場が2度おいしい「GDP上方修正」の理由
7~9月期改定値から見えてきたもの
内閣府は12月8日、今年7~9月期のGDPの2次速報(改定)値を公表しました。実質GDPが前期比0.6%増加、年率換算で2.5%の増加となり、その内容を材料に株式市場は大幅に続伸。当日の日経平均株価は前日に比べて300円以上上昇して、2万2,800円台を記録しました。11月15日に公表された1次速報値では、その内容がネガティブに評価され、日経平均株価も6営業日続落となったことは11月21日配信記事でご紹介しました。今回は、同じ統計の改定なのに、その逆の結果になりました。それでは、具体的に何が改定され、どのように評価されたのでしょうか。少し詳しくみていきましょう。
日経平均株価に連動する「コーヒー消費量」のカラクリ
どちらも5年連続で上昇中
11月9日に約26年ぶりとなる2万3,000円台を付けた日経平均株価。その後も短い調整を挟みつつ高値圏を維持しており、1ヵ月後の現在も2万2,000円台で推移しています。この日経平均と意外な相関性を持つものがありました。実は、コーヒーの消費量は昨年まで4年連続で過去最高を記録。アベノミクス相場以降の株価と同じように、上昇基調をたどっているのです。なぜ株価が上がると、コーヒーの消費も伸びるのか。あるいは、その逆の構造になっているのか。両者の動きが連動する理由はどこにあるのでしょうか。
好景気に黄信号?ガソリン価格と景気の無視できない相関
危険水域は「リッター160円」
百貨店での販売が好調です。外国人観光客の買い物増加が貢献しています。ただし、理由はそれだけではありません。株高の恩恵で、宝飾品など高額品の売れ行きが好調といいます。日本の消費がひさびさに元気を取り戻していると考えたいところです。ただ、冷静に考えて、株高の恩恵を受けられるのは、一握りの富裕層だけです。国民全体に恩恵が広がっている感覚はありません。日本の消費が本当に元気を取り戻すには、もっと賃上げが広がる必要がありますが、今のところ、好景気でも賃上げは広がりません。一方、家計にとって、気になる兆候も出ています。ガソリンや食品、宅配便など、国民生活に直結する分野で、値上がりが目立つようになってきたことです。その中身をくわしく見てみると、景気変調の先行指標に“黄信号”が灯るかもしれない状況が浮かび上がりました。
「いざなぎ超えの好景気」でも私たちの実感が薄い理由
7~9月GDP速報から見えてきたもの
11月15日に内閣府が公表した今年7~9月期のGDP(国内総生産)速報。GDP成長率は前期比で実質+0.3%(年率+1.4%)と、7四半期連続でプラス成長となりました。茂木敏充経済財政・再生相も同日の記者会見で「景気は緩やかな回復基調が続いているとの認識に変わりはない」と評価しています。一方で、GDPの速報値が市場予測を若干下回ったことを材料に、日経平均株価は6営業日続落となりました。続落期間としては1年半ぶりの長さとなり、今年最長を記録したことからニュースなどでも取り上げられました。はたして、足元の景気は好調を維持しているのか、あるいは、勢いが鈍化してきているのか。速報値の中身を読み解くことで、景気の実際の姿を浮かび上がらせたいと思います。
普通の会社員でも内閣府「街角調査」を読むべき理由
景気ウォッチャーのコメントが満載
皆さんは「景気ウォッチャー調査」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。内閣府が毎月実施している景気動向に関する調査で、ニュースなどでは「街角景気」という言葉で紹介されることも多いので、聞いたことがある方もいるでしょう。この調査の直近の結果が11月9日に内閣府から発表され、今月の現状判断が52.2ポイントと、3年7ヵ月ぶりの高水準となりました。この状況について、内閣府では「着実に持ち直している」というやや控えめな言葉で評価しています。でも、この景気ウォッチャー調査は、報告書を読めば読むほど面白い、日本全国の景気に敏感なおじさん、おばさんたちの生々しい声が聞こえてくるような調査なのです。今回の調査も、よく読んでいくと現在の日本全国の「街角の景気」が手に取るように伝わってきます。
現金主義で大丈夫? “物価上昇にも対応”できるお金の貯め方
FPの家計相談シリーズ
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。質問が2つあります。ひとつは、20代の妻が投資に関して無関心、いや、むしろ、毛嫌いしていることです。資産は少しずつですが、確実に増えているのですが、妻は「いつどうなるかわからないことにお金を使うなんて。今、確実な現金があるんだから、そんなことしなくたっていいじゃない!」といった具合です。私が「老後のため」「余裕ある生活を送るため」などと必要性を説いたところで、まったく理解してくれません。わかってもらえるような方法はあるでしょうか?もうひとつは、投資法の変更についてです。今まで株式投資を中心に行っていましたが、自身の年齢も考え、そろそろ不動産投資に切り替えようかと考えています。区分所有のマンションから始めようと思っています。資金として、現在の株式1,000万円をすべてを頭金にするのか。それとも株式を半分残して500万円程度の頭金にするのか。あるいは、ほかによい案があればアドバイスをお願いします。また、現在は自宅マンションの住宅ロー