はじめに

分散投資のメリット

ここまでは経済とか投資の本質だとか、情報とは何かとか、一番経済合理的な判断をすると考えられている投資家という主体であっても非合理的な考えをしてしまうという行動心理学、行動経済学、だからそういうふうにならないようにしましょう、とかの話をしてきました。

そういういろいろな本質とかを知ったうえで、やっぱり分散投資というのは大変重要なツールというか、手法になります。分散投資がなんでいいのか。卵の話とかいろいろな話がありますけれども、一番簡単な理由はこれです。

これは数学が得意な人にはすごいよくわかるし、数学が得意じゃない人にはよくわからない文章なんですけれども、2つの資産のリターンの合計は、ある期間中の2つの株式を持った場合のリターンの和というのは、1個1個の株式が生んだキャピタルゲインと配当の数字を足すだけなので、単なる足し算です。それは株と債券だろうがなんだろうが、リターンは単純な足し算です。

リスクは変わってくるんです。リスクはここに書いてあるように、混合資産のボラティリティをVcとして、2つの資産のボラティリティをV1V2として、相関係数をcとすると、Vcの自乗=V1自乗+V2自乗+2cV1V2です。そうすると、cが1の場合はVcは√V1V2の自乗になるのでV1+V2になります。

cが-1のときには、V1-V2の自乗のルートになるので、絶対値のV1-V2。だから、まったく逆相関になる資産を2つ持つとリスクは0になります。リターンは足し算。リスク、ボラティリティは0。だから分散投資はいいんです。これがモダンポートフォリオ理論とか、マネックスアドバイザーなんかで使ってるブラック-リッターマン・モデルという一番進んだ分散投資の理論があるんですけれども、それらすべての根幹にあるのはこの考えです。これを算数が得意な方は頭の片隅に置いておいていただけると、分散投資が理論的に必ずメリットがある、リスクが減らせるという意味でメリットが必ずあることがおわかりいただけると思います。

マーケットをみて裏に何があるのか考える

先ほど、投資をするにはお金の流れを考えることが大切だという話をしましたけれども、その際に、やっぱり世界がどうなっているかを見ないと、よくわかりません。

ブレグジットとかトランプが大統領になったとか、マクロンが勝ったとかですね。少なくともマクロン、フランスの選挙の直前ぐらいまでは、専門家の言うことはまったく外れていました。自慢するわけではありませんが、私は相場とかだいたい去年からずーっと当てているんですよ。北朝鮮のことからトランプだったらどうなるとか、今回の選挙だったらどうなるとか、こういうふうになったらマーケットはどうなるということは、つぶやきというコラムを読んでいただければわかるんですけれども、私はずーっと当ててるんです。この2年間くらい。

これはなぜかというと、単純にマーケットを見ているからです。価値観が多様になり、情報の流通がSNSとかいろんな形で流れるようになり、我々が知らないところでフェイクニュースとかがあったり、分析が行われたりする中で、本当に普通に世の中の状況を分析することは、現代においては不可能だと思います。自分が知らないことはあまりにも多いし、自分の知っていることもあまりにも偏った形で伝えられてきてるからで、それらの情報にはあらゆる操作が入っていると考えるのがいいと思います。

なので逆に起きたことから、その裏に何があるのかを考える方が、はるかに生産的だと私は思っています。マーケットが上がり始めたら、なんでマーケットが上がるんだろう、と逆算して考えてみる。これはトランプのことでも言えるんですけど、トランプのことを批判するのは、これからのことを分析するには有益ではなくて、なんでトランプを当選させたのかを考える方がはるかに意味がある。

人間性とかに引っ張られて、現象についての分析とか批判をしたがるんですけれども、なんでそうなったのか、元から考えておかないと、次に何が起こるかってわからないんですよね。そう考えていくことが必要で、とにかくこんなことはありえないとかではなくて、冒頭の方にも申し上げたように、自分よりもマーケットの方がはるかに大きくてはるかに賢くて、はるかに参加人数も多くて、インサイダーもいるし、すべての人がいて、外国の人もいて、しかも早くから考えている。そういう人たちの考え方の総和として出てきているマーケットの動きを観察して、じゃあなんでこうなるのか、と考えることの方がはるかにためになり、大切だと思います。

評論家とか、その手の方の言うことはほとんどあてにならないので、ご自身で起きていることから仮説を立てて、次に何かが起きたとき、こないだ立てた仮説だとマーケットはこうなるはず。ところがそうじゃなかったら、またなんでだろう、と考えることの繰り返しで、もちろんフレームワークというか公式というか、原因と結果の関係というのはどんどん変わっていくんですけれども、そういった形でしっかりと帰納法的に考えることが投資をするうえですごい大切だと私は思います。

新しい時代に起きていることに興味を

アメリカという国は簡単にいうと、株価が上がることが国にとっていいという社会的なコンセンサスがあるんです。立法府にも行政府にも中央銀行にも、マスコミにも、社会にも、教育者にも、そういうコンセンサスがある。そしたら株価は上がります。加えていろいろな理由でアメリカは大変恵まれていて、どうしても上がってしまうということになるんですね。

1987年10月19日、30年前にブラックマンデーが起きました。今の日経平均は14連騰、このままいくと15連騰するかもしれませんけれども、ブラックマンデーが起きた30年前の日経平均と今の日経平均ってほとんど一緒です。30年前にブラックマンデーが起きたとき、一旦、ダウ平均は1,600ドル台まで下がりました。今、2万何千ドルですよ。全然違うんです。これはインデックスの作り方にも問題があるんですけれども、国としての考え方からもこれは違う、ということが大きいと思います。その他にここに書いてあるように財政の問題とかもいろいろあり、ドルは強くなっていくということが考えられます。

時間がだんだんなくなってきましたけれども、お金の流れの行き先を考えるときに、やっぱり新しい時代に起きていることに興味を持っていただくことはすごい大切だと思います。

価値観が多様化していると、フェイクニュースって本当にあります。日本はフェイクニュースが世界で一番少ない国です。しかも桁違いに。世界では当たり前のようにあります。FacebookとかTwitterとかを使って当たり前のように個人別に違う情報が送られて、錯覚を起こさせられている。ブロックチェーンとかビットコイン。ビットコインすごいですね、もう6,000円台にのりました。一方でCBCC(Central Bank Cryptocurrencies)、中央銀行による仮想通貨が、スイスのバーゼルという、銀行の親分みたいなところでもう議論がされています。

話をはしょりますけれども、シェアリングエコノミーが進めば、便利になるけれどもGDPは下がります。GDPだけが経済をはかる指標じゃなくなってきてます。平均寿命が100歳を超えてきます。そういうときに若い人が今までと同じようにリスクをとるでしょうか。昔だったらどうせ死ぬからリスク取ってやろうよ、というけれども、これからの若い人は、どうせ待っていれば皆死ぬんだから、そしたら俺たちだけになるんだからリスク取らないで生きようよとなります。そういうふうに寿命が変わるとか技術が変わることによって行動パターンが変わり、それが経済とかマーケットとかに出てきます。インデックス化が進みすぎて、ボラティリティが下がっています。

世界で起きていることをしっかり知ることが、これからの投資活動とか、社会生活をしていくのにすごい大切だと思うので、こんなことを追えといっても、新聞とかで読んでこんなの全部知ることは大変です。ただ、投資をして何かポジションを持っていれば、小さくてもアメリカの株のETFを持っておくとか、エネルギーのファンド、投資信託を持っておくとかしておけば、気になって新しいことが見えてきます。

そうして、世界のいろいろなところに少額でもいいからポイントを貼って、世界で何が起きているのかをしっかり追っていくことが皆さんの生活を強くするうえでも大変重要なのではないのかなと。そういうところに投資の意味があるのではないのかなと思います。

最後にちょっと簡単ですけれども、当社マネックス証券では、この10月から資産運用関係を大変強化しています。iDeCoも遅れながら始めたんですけれども、遅れた以上はダントツに低コストでいい内容の商品を集めて、iDeCoを始めました。つみたてNISAも始めます。投資信託も強くしています。

つい先日発表しましたが、マネックスアドバイザーというのはポートフォリオを皆さんが構築するための支援ツールであって、先ほど言ったブラック-リッターマン・モデルとか世界で最新鋭の投資理論を使っているんですけれども、お任せ運用するんじゃなくて、皆さんのマーケットや経済に対するビューというものを入力することができます。お任せしっぱなしでもいいし、自分で関わっていくことでマーケットや経済を勉強していって投資をもっとやっていくこともできます。

このように資産運用のサービスも強化しておりますし、申し上げたように、運用とか投資はただ単にお金を増やすだけじゃなくて、いろいろと世界のことを知るいいきっかけになるし、また、投資は経済の本質である分業に自らが関わるということで、大変意義深いことであるし、皆さんが主役であるから気負うことは一切ない。ただ全員が主役なので、あんまり自信満々になっちゃうと危ないんですけれども、そういう考えでぜひ楽しく資産運用をしていただいて、皆さんの生活、人生を豊かにしていただければ大変よろしいのではないのかな、と思います。

本日は長い時間どうもありがとうございました。

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