はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
資産運用をはじめようと考えています。利用する制度、おすすめの商品など、どのような運用方法がおすすめでしょうか? 目的は子供の教育資金と老後資金です。また投資資金をどこから出すか(預金から充てる、保険を解約する、今後の給与から積み立てるなど)についても、ご教示ください。
【基本情報】
・本人:38歳会社員(小売、東証一部上場、1,000名規模)、男性
・家族:妻35歳(パート)、子供7歳(小学校1年生)
・年収:本人630万円(手取り450万円)※家賃給与天引き含む家賃約10万円、65%が会社補助、妻60万円
・資産:預金750万円(定期預金600万円)
※ほかに子供の口座に230万円。今後も子供手当やお年玉などを積み立て、結婚した時に200万円程度を渡す予定。残りは教育資金に使うかも。
【現在の運用】
・勤務先の持株会で月1万円購入(+10%補助あり)
・一時払済終身保険1,800万円(死亡時2,000万円)
・積立終身保険年24万円(死亡時1,000万円)
※すべて日本円での運用
【その他】
・自宅を購入する予定はありません。会社の家賃補助65%を考えると、賃貸で過ごし、リタイヤ後に安い一軒家購入でいいかと考えてます。なお、年間80万円から100万円程度は預金ができる状況です。また、一時払済終身保険のうち1,000万円は、今、解約しても返戻金がマイナスにはなりません。ほかの800万円分は今だとマイナスです。会社は確定給付年金を採用しており、今後、確定拠出年金を利用したいと考えています。
(30代後半 既婚・子供1人 男性)
内藤: ご質問ありがとうございます。資産運用は投資期間によって、どのような運用手法を選択すべきかが変わってきます。
期間に合わせて適切な手法を
今回の場合、教育資金は比較的短い期間、老後資金は長期の資産運用を行うことになるため、それぞれに適した方法を取る必要があります。
10年以内に使う予定がある資金については、株式や投資信託のようなリスクが高い運用では、元本割れのまま資金が必要な時期が来てしまうリスクがあります。
10年というのは厳密な数字ではなく、あくまで目安になりますが、それよりも短期で必要になる資金に関しては投資よりも貯蓄性の高い金融商品で堅実に資産を守っていかれたほうがよいでしょう。教育資金はこちらに該当します。
一方、老後資金のような運用期間が長いものについてはリスクを取ることが可能です。
現時点では運用対象を金融資産のみと想定されているようですが、不動産のような実物資産の運用とも比較検討されるとよいでしょう。
現在、38歳ということですから、60歳をターゲットにしても約20年の運用期間があります。また、安定した収入を得ていらっしゃるため、お金を借りる力もあるでしょう。
借入で不動産投資する場合
試しに、借入による不動産投資と金融商品の積み立てを比較してみましょう。
まずは2,000万円をフルローンで借り入れて、中古ワンルームの購入を想定してみます。管理費・固定資産税などを除いた利回りを4.5%とすれば、年間の家賃収入は90万円です。
もし20年の不動産担保ローンを年利1.5%の元利均等返済で借りられるとすれば、元利返済額は毎月約9万7,000円となります。家賃は月割りで7万5,000円ですから、毎月2万2,000円の持ち出しです。
単純に考えると、毎月2万2,000円を払えば、20年後に現在2,000万円のワンルームがローンなしで手に入ることになります。ただし、この計算では保有期間中の家賃の下落や空室リスク、金利の上昇などは想定していません。
投資対象は柔軟に比較検討を
では、金融商品で同じ金額だとどうなるでしょうか。
同じ2万2,000円を金融資産で積み立て運用すると、年平均5%で運用できたとしても20年後に約900万円です。
もちろん、諸経費やリスクが異なりますから単純に比較はできません。前者にも興味を持たれるのであれば、不動産投資についても検討してみてください。
ご提案としては、教育資金は元本保証型の手堅い運用で守っていく。そして、老後資金は金融資産は補助の付いている持株会や確定拠出年金を活用し、資産形成を行う。
それと同時に、ご自身で運用する資産については金融資産と実物資産を比較して判断されるとよいでしょう。
実物資産は金融資産よりも投資金額が大きく、売買コストもかかります。流動性に留意する必要もあります。セミナーや書籍でしっかり情報収集し、納得した上で投資を始めることが重要です。
投資の対象を柔軟に比較し、最適な資産形成を考え、実践してください。