はじめに

顔の絵文字も「2つだけ」ある

紙幣・入れ物・通貨記号・施設・グラフというテーマに分けて紹介してきたお金の絵文字ですが、いよいよこれが最後のテーマとなります。その最後のテーマとは「顔」です。?のような顔系の絵文字にも、実はお金に関連する絵文字が(いまのところ)2つだけ存在するのです。

そのひとつは、お金の口の顔(?/Money-Mouth Face)と呼ばれる絵文字です。拡大して見て頂ければ分かると思いますが、黄色い丸い顔面がベースになっており、両目と口(舌)の部分に$マークが書き込まれている形です。このデザインは各社の実装とも大きな変わりはありません。日本のガラケーには存在せず、Unicodeが新たに導入した絵文字です。SNSなどの書き込みでは、お金/富/仕事への言及でよく登場するようです。

そしてお金が関連する、もうひとつの「顔の絵文字」があります。それはシンボルが口にある顔(?/Serious Face With Symbols Covering Mouth)という絵文字です。この絵文字については、詳しい説明が必要かもしれません。

?に見る、絵文字文化の国際化

まずはデザインを確認しましょう。顔のベースは黄色もしくはオレンジ色の丸顔。目元を見ると何かに「怒っている」ような表情をしています。いっぽう口元は黒色のテープのようなもの(人物写真で目元を隠す際に用いる黒線に似ている)で隠された状態になっています。そしてその黒線上に「&$!#%」といった記号が書き込まれているのです。実装により書き込まれている記号の種類・数は異なりますが、$マークの出現確率は高いようです。

ちなみにこの絵文字は、Unicodeの絵文字のなかでも、かなりの新参者に相当します。Unicodeが絵文字を初めて規格化したのがUnicode 6.0 / Emoji 1.0(2010年)でのこと。ここまで紹介したお金の絵文字も、その多くがEmoji 1.0の時代に登場していました。しかしシンボルが口にある顔(?)は、Unicode 10.0 / Emoji 5.0(2017年)で新たに加わったばかりなのです。

さて問題はこの「&$!#%」の部分が何を意味するのか、ということでしょう。これはgrawlix(グローリクス)と呼ばれるコミック表現(日本のマンガ用語でいうところの「漫符」のこと)。コミックで猥褻/侮辱/激昂/ナンセンスなどを表現する際、吹き出しの中にこのような記号を並べておくと、婉曲表現が可能になるといいます。これは日本語の口語で言うところの「ピー音」みたいなものかもしれません。?の場合は顔が怒りの表情であるので、怒りや不満を婉曲的に表す場合によく登場するようです。

ともあれ、このような「英語圏の文化に独特な表現」も、絵文字規格での存在感を増しているわけです。これは絵文字の国際化を感じさせる出来事のひとつといえるでしょう。

今年は算盤とレシートが参入予定

ということで、今回は前後編に分けて「お金の絵文字」について特集してみました。

もう一度振り返ると、お金の絵文字には、紙幣系(?????)の5種、入れ物系(???)の3種、通貨記号系(??)の2種、施設系(??)の2種、グラフ系(???)の3種、顔系(??)の2種、計17種の文字が存在することが分かりました。ただし以上は筆者が独自に目視で確認した情報に過ぎません。漏れている情報があった場合はどうかご容赦ください。

さてそんなUnicodeの絵文字ですが、今年登場予定のUnicode 11.0 / Emoji 11.0(注:今回よりEmojiのバージョン番号もUnicodeに合わせたナンバリングを行うことなった)では、新たに「算盤(そろばん)」と「レシート」の絵文字も登場する予定なのだそうです。

ちなみに絵文字情報サイトの「Emojipedia」では、新しく加わる絵文字のサンプル画像も独自に公開しています。そのうち算盤の絵文字では「上が三珠、下が五珠」の算盤を描いていました。これは日本で一般的な「上が一珠」の算盤とは異なる見かけです。もちろん各社の実装がこの通りになるとは限らないのですが、このような予想が登場するところにも「絵文字の国際化」を感じることができます。

そして今後追加される絵文字の中にも、お金に関連するものが新たに登場するかもしれません。そんな新しい絵文字が、どういう文化に根ざし、どういうデザインが施され、どういう意味を持ち、どういう使われ方をするのか。今後も大いに注目していきたいと思います。

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