はじめに

外貨預金版「シャープレシオ」

そこで、金利の水準と為替の変動幅を比較してみました。これは、リスク、つまり為替の変動の激しさに対し、予想リターン、つまり利息収入がどの程度高いのかを比較したものです。株式のリスクとリターンを計る指標に「シャープレシオ」というものがありますが、そのコンセプトを用いて試算したものです。

株式のシャープレシオ=株式の予想超過リターン÷株価の変動リスク
外貨預金の“疑似”シャープレシオ=定期預金利回り÷為替の変動リスク
(分母のリスク指標としては、1年間の為替変動率の標準偏差の過去5年分の平均を使用) 

この数値が高いほうが、為替リスクが低い割に定期預金の利回りが高く、その通貨の外貨預金が魅力的である、ということになります。

これを見てみると、先進国では、米ドルやニュージーランドドル、豪ドルなどのレシオが高いということがわかります。米ドルは、一般に手数料も低いので、魅力的な預金先と思われます(上図)。

一方、アジアや新興国では、南アフリカ・ランド、中国人民元の順でこのレシオが高くなっています。これらの通貨を選べば、為替の変動リスクの割に、高めの預金利息が得られる計算となります(上図)。

新興国通貨の注意点

ただ、新興国の場合、格付けが低い国は、財政や不良債権などの大きなリスクが突然表面化する可能性があります。最低限、投資適格級(「BBB」以上)の国にしておくのが無難です。たとえば、南アフリカの現在の平均格付けは「BB+」で、投機的とされていますので、ちょっと注意が必要です。

このように、外貨預金は、為替の変動リスクと国の信用力のリスクと比較して選ぶのが良いでしょう。少し面倒にも見えますが、今の国内の低金利を考えれば、十分検討に値すると思います。

しかも、預金先のニュースに興味が湧き、いろいろ調べてみたくなるのではないでしょうか。外貨定期預金を通じて、世界各地に思いを馳せるのも悪くないかもしれません。

(文:マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻奈那)

この記事の感想を教えてください。