先日、ニュースを読んでいて目についた記事が2つあります。1つは先日発表された日本の消費者物価指数についてです。大手宅配業者の値上げの影響で、運送料が上昇し続けているというもの。もう1つは最近の米国金利の上昇についてです。

一見、何の関係性もない2つの記事ですが、実は見方によっては米国金利の行方を予想するために重要なヒントを与えてくれるのです。


日本の物価を詳しく見る

総務省が5月18日に公表した日本の4月の消費者物価指数(全国総合)は前年比+0.6%となり、上昇率は前月から0.5%縮小しました。「デフレ脱却が遠のいた」「野菜価格の高騰が牽引した物価上昇が一服した」などの解説をすでにニュースで目にしたかと思います。

しかし、内訳を見てみると、運送料をはじめ、人件費や原材料費の上昇は依然として続いていることがわかります。

大手宅配業者は昨年の秋から値上げをしました。ヤマト運輸が昨年10月に27年ぶりに値上げをしたのを皮切りに、佐川急便が同年11月、日本郵便は今年3月に値上げをしました。下図の通り、昨年10月からの運送料の伸びは非常に大きなものとなっています。

やや減速はしているものの、エネルギー価格もこの1年間の物価上昇に大きな影響を与えていたことが上図からわかります。人手不足やエネルギー価格の上昇で運送料が際立って上昇していますが、一方で家庭用耐久財の価格はほとんど上昇していません。

現状、日本においてはコストプッシュ・インフレが顕在化している状態であり、決してディマンドプル・インフレではないということです。つまり、単純に人件費や燃料代などのコストが上昇しているため、結果として物価も上昇しているのであって、多くの人がモノをたくさん買うから物価も上昇していくという、健全な物価上昇ではないということです。

米国のインフレ状況はいかに?

先月24日に米国長期金利の指標となる10年物国債利回りが2014年1月以来、4年3ヵ月ぶりに3%台に乗せました。冒頭で米国の金利について触れましたが、経済学的に見て、物価と金利は切り離せません。米国の金利について見る前に、簡単に米国の物価状況も日本と同様に見てみましょう。

上図の通り、米国においてもサービス(医療や教育など)の価格はじわじわと毎年2%前後上昇しているのに対し、モノの価格は上昇していないことが分かります。つまり、米国においても強い需要は発生していないということがわかります。このポイントは今後の金利の行方を考える際に、非常に重要なポイントとなります。

米国の金利を考える際に、当然ながら米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に注目が集まるわけですが、彼らは金融政策の決定要因の1つに物価を見ています。

今月23日、月初に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表しました。物価上昇率が政策目標の2%に近づいているとし、来月の会合において利上げを示唆する一方で、仮に物価が政策目標の2%を一時的に超えても政策目標とは矛盾しないとし、さらなる利上げペースの加速には慎重論を唱える参加者が複数いました。

つまり、需要が牽引していない物価上昇に対しては、金融政策としての利上げは正当化できないというスタンスの表れでしょう。FRBは中長期的な政策金利の適正水準を3%程度としているため、金融政策をベースに考えれば、これ以上の金利上昇は他の要因がない限りは難しいと考えられます。

金融政策以外の金利上昇要因は?

当然、債券市場には実需ベースの市場参加者の他に、投機目的の参加者もいます。時として、彼らの投資行動が大きく相場を動かします。金融政策以外の金利上昇要因の1つにもなりうると思いますので、その点も視覚的に確認してみましょう。

債券はややこしい部分があるので、あまり詳しくない人のために簡単に整理します。債券の価格が上昇すると利回りは低下します。上図の青い線がゼロより上にある時は債券を買っている投資家が多く、結果として債券価格は上昇し、利回りは低下します。

直近の動きを見てみると、債券を売っている投資家が多いため、債券価格が下落し、結果として利回りが上昇していることがわかります。

現在、米国債券の売っている投資家の投資金額合計はここ10年弱の間では最高レベルに達しています。つまり、ここからさらに債券が売られていく、つまり利回りが上昇していくということは考えにくいのです。

よって、コストプッシュ・インフレが顕在化してきたことで米国の中央銀行であるFRBが利上げペースを加速させる可能性は低く、かつ投資家の売買行動による金利上昇も見込みづらい現状なのです。目先、米国の長期金利がここからさらに上昇し、3.5%、4.0%と徐々に上昇し続けるという展開は想定しづらいと考えます。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)