はじめに

個人型確定拠出年金の「メリット」と「デメリット」

個人型確定拠出年金の主なメリットは次の通りです。

メリット1 積み立てするとき、全額所得控除の対象となる

毎月決まった額の掛金を拠出しますが、その掛金が全額、所得控除の対象となります。確定申告することで所得控除が受けられ、所得税と住民税がお得になります。

加入対象者別の毎月の掛金上限は上記の通りで、例えば年収400万円サラリーマンが、毎月の掛金の上限2万3,000円まで積み立てたとします(年間27万6,000円)。すると、その約20%(所得税10%・住民税10%)にあたる約5万5,000円の節税効果があります。10年続ければ55万円ですからその効果は非常に大きいといえます。

メリット2 運用するとき、運用益が非課税になる

一般に、投資信託や定期預金等の金融商品の運用益に対して約20%の税金がかかります。一方、運用益が非課税扱いになる確定拠出年金では、運用益が生じても税金がかからないので、より複利効果の高い運用が可能になります。

メリット3 受け取るとき、公的年金等控除、退職所得控除の対象となる

原則60歳になってから受け取る方法には、「年金」「一時金」「年金と一時金の併用」の3種類があります。年金として受け取る場合には雑所得(公的年金等)となり公的年金等控除が適用されます。一時金として受け取る場合には、退職所得として課税され、退職所得控除が適用されます。

デメリットについても理解しておくことが大切

メリットの多い確定拠出年金ですが、デメリットもあります。それは、60歳以降でなければ受け取ることができないことです。例えば急に現金が必要になっても、運用に成功し大きく利益が出たとしても、その現金を引き出すことができないというのはデメリットといえるでしょう。

また、受け取るときに公的年金等控除や退職所得控除があるとはいっても、元々は自分で収めた掛け金です。それにもかかわらず、場合によっては課税されてしまう可能性があるということもデメリットのひとつといえるでしょう。

自分で商品を選んで運用するため「選ぶ力」が必要

確定拠出年金では自分で運用商品を選んで資産を運用します。運用商品には元本確保型の商品(定期預金や保険商品など)や、投資信託があり、個別株やETFなどは運用対象外となっています。投資信託の投資対象としては国内株、外国株、国内債券、外国債券、バランス型など、多数の商品がラインアップされています。

運用商品は1本でも複数でも好きなように選ぶことができます。買った商品を売却して他の商品に買い換える(スイッチング)ことも自由にできます。運用を始める際のポイントは「分散」です。10個の卵を1つの箱に入れておいた場合、箱を落としたらすべての卵が割れてしまいますが、複数の箱に分けておけば、全部が割れるのを防ぐことができます。

日本株で運用するタイプの投信を買ったら国債や外国株で運用する投信も買うというように、値動きの傾向が異なる商品を組み合わせておけば分散効果は高まります。

いずれにせよ定年後の生活資金になるわけですから、無理のない範囲で運用することが大切です。リスクを取りたくないなら、すべての資産を定期預金や保険商品など元本確保型の商品で運用することも可能です。この低金利時代ですからリターンは多くは望めませんが、そもそも掛金が所得控除の対象となる時点で約2割のリターンを得ていると思えば、元本確保型の商品だけの運用でも十分といえるかもしれません。

また、資産運用は継続してこそ効果があります。資産がなくなってしまっては継続することができないばかりか、生活にも影響が出てしまいます。どの程度まで資産が目減りして損失があっても生活に影響がなく、また、資産運用を継続することができるか、自分の家計や預貯金、ライフステージ、性格やリスク許容度などと照らし合わせて考えることが大切です。

これを踏まえて、自分にあったポートフォリオを設定し、運用を始めてみましょう。iDeCoでは、投資信託で運用するのが簡単です。例えば設定したポートフォリオが、「国内債券20%、国内株式30%、海外債券20%、海外株式30%」というものならば、それぞれのジャンルのインデックスファンドを購入します。インデックスファンドを選ぶ際は、低コストのものを選ぶことがポイントです。

設定したポートフォリオと同じようなアセットアロケーションのバランスファンドがあれば、それを1本買うだけでも構いません。ただしその場合、手数料には注意する必要があります。手数料が高すぎるのであれば、同様のファンドでもっと安い手数料のものを探すか、あるいは自分で個別のファンドを組み合わせてポートフォリオを構成するとよいでしょう。

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