はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

40歳でできた小1の子どもの教育費と、72歳まで返済が続く住宅ローン、老後資金の準備が重なり不安です。どのような方針で今後臨むべきか教えてください。たとえば、貯蓄よりも住宅ローンの繰り上げ返済を優先すべきなのでしょうか。


〈相談者プロフィール〉
・男性、46歳、既婚(妻:専業主婦)、子ども1人(小1)
・職業:公務員
・居住形態:持ち家(マンション)
・手取りの世帯年収:570万円
・毎月の支出目安:40万円
・総資産:1,100万円


花輪: 子育て中の家庭であれば、「住宅ローン・教育費・老後資金」といった家計における3大プロジェクトを同時に走らせなければならないことがあります。特に晩婚、晩産カップルの場合は、同時並行に行わなければならない確率が高まります。

住宅ローンを返済しながら、子どもの教育費や老後資金などの貯金をすることは可能なのでしょうか。その場合、何を優先して、どういう順番でお金を準備すれば良いのでしょうか。基本的な考え方をお伝えしたいと思います。

まずは貯金200万、その後は……

まず、最低でも200万円程度の預貯金は確保しておきましょう。これは、住宅ローン・教育費・老後資金とは別に、突然の病気や失業といった人生の不測の事態に備えるためです。

最低限の貯金をつくった後は、教育費や老後資金といったさらなる「貯金」の増額よりも、優先すべきは住宅ローンの返済です。返済を進めることで利息の負担を減らすことができるからです。

ただし、数年内に支払う必要がある教育費に関しては、住宅ローン返済よりも優先させましょう。

控除期間中は繰り上げ返済をせずに貯金

例外として、住宅ローン控除を受けている期間は、ゆっくり返済することも選択肢の一つです。現在は住宅ローン金利が非常に低いために、無理をしてまで返済を進める必要はないからです。

住宅ローン控除の仕組みについても、簡単におさらいしましょう。住宅ローン控除とは、購入1年目から10年目までの年末のローン残高の1%が所得税や住民税から控除され、確定申告で戻ってくる制度です(控除限度額あり)。

繰り上げ返済を進めると、年末時点のローン残高を減らすことになります。そのため、この期間はあえて繰り上げ返済をせずに貯金をして、住宅ローンの控除期間終了後に、積極的に繰り上げ返済をする方法もアリということです。

繰り上げ返済が有利になるか否かについては、ケースバイケースなので、詳しくは税理士などの専門家に相談をすることをおすすめします。

住宅ローンはいつまでに完済させる?

住宅ローンは遅くとも退職前には完済をしましょう。教育費も、退職金をあてにせずとも貯め終わっていることが望ましいです。専業主婦の妻であれば、子どもに手がかからなくなった後は働きに出て、その収入の何割かを老後資金のための貯金に回したいところです。

同時に3つのプロジェクトを達成させるのは至難の技ですが、緊急度に応じて優先順位を決めて、一つずつ攻略をしていくしかありません。

特に子育て(進学)や住宅購入の時期が遅くなったカップルは、退職前後にローンの完済や子どもの大学資金問題が出てきます。家計の管理には、くれぐれも要注意です。迷ったり、困った場合にはファイナンシャルプランナーなどのプロに相談をするのも一つの手段です。

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