はじめに
日証金が重い腰を上げたワケ
日証金がベンチャー企業と組んで、個人投資家向けのサービスを提供するのは、今回が初とのこと。なぜ今になって重い腰を上げたのでしょうか。
アプリ開発の話が具体化したのは、2018年に入ってから。日証金がフィナテキストと新しいビジネスについて意見交換をしていく中で、まずはフィナテキストの得意分野であるアプリ開発で事業化を進めようという展開になったそうです。
折しも、2018年1~3月期の日証金の有価証券貸付料が15.5億円と、2017年10~12月期の31.1億円から激減。その後も四半期で10億円台での推移にとどまっています。
もちろん、日証金も貸借取引残高を増やそうと、ホームページの改善や証券会社の職員向けセミナーなど、情報発信を強化してきました。しかし、直接、個人投資家にアクセスする手段を見いだせないでいました。
信用取引の裾野を広げていくためには、どんな手段があるのか。信用取引をもう少し身近に感じてもらうにはどうすればいいか。その苦悩の末にたどり着いたのが、フィナテキストとの協業だったのです。
フィナテキストが参画した思惑
一方のフィナテキストにとっても、実は信用取引を盛り上げていきたい事情がありました。同社傘下の証券会社、スマートプラスでは9月に信用取引の取り扱いをスタート。今回のまじトレ!で信用取引の裾野が広がれば、グループの収益面にもプラスに働きます。
また、「どういうユーザーがどういう機能を使っているか。どんな属性のユーザーが多いのか。コミュニティでの交流の内容なども生かしながら、自社のマーケティングに生かしていきたい」と、木下さんは狙いを明かします。
日証金・貸借取引部の吉田隆寛さんは「現物株をやっているけれど、信用取引に手が出せていない人の橋渡し役になれれば。株価が上がり切った局面では逆張りで『売り』ができるということを個人投資家に理解してもらいたい」と意気込みます。
リスクを理解したうえで、信用取引を使いこなすことができれば、個人投資家にとってもメリットは小さくないはず。まじトレ!の成否は、政府が進める「貯蓄から資産形成へ」の流れにおいても、大きな役割を果たすかもしれません。