キャリア

「預金8万円」と「ファーストクラス」から学んだお金の価値観

お金は自由になるための手段だ

あなたにとってお金とはどんな存在でしょうか。家計簿アプリを使っている方なら、普段からお金をどんなふうに使い、またこれからどんなふうに使っていきたいか、考えることが多いのではないでしょうか。

私は大学を卒業してから約20年間、一貫してお金に関わる仕事をしてきました。新卒で入った財務省では金融や財政政策に関わり、その後コンサルティングファームのマッキンゼーでは日米の金融機関をサポートしました。今は全自動の資産運用サービス「ウェルスナビ」で起業し、CEO(最高経営責任者)を務めています。

仕事では時に数兆円単位のお金を扱いましたが、プライベートではお金があったりなかったり、ジェットコースターのように変わる環境に身を置きました。

仕事がなかった時期は、貯金が 8 万円まで落ち込み、野菜の値段が数十円上がるだけで体が反応するような生活を送りました。一方で、マッキンゼーのニューヨーク時代にはファーストクラスでの出張が当たり前という華やかな暮らしを経験しました。

数十円の差に悩む生活と、10ドル(約1,000円)以下のお金は考えずに使う生活の両方を経験したことで、私はお金の存在意義と真剣に向き合うようになりました。


失業中に遭遇した“フラペチーノ事件”

当然といえば当然ですが、お金がない時期はお金のことばかり考えてしまいます。いわば、お金にがんじがらめになっている状態です。

財務省を退職した後、フランス郊外にあるビジネススクール・INSEADに留学しました。留学には多額の費用がかかります。退職時に1,000 万円あった蓄えは、卒業するときには100万円を切っていました。

ビジネススクールを卒業すれば仕事が見つかるだろう、という私の考えは安直でした。20 社近い企業に応募しましたが、仕事が決まらないまま卒業することになりました。

卒業して 2 カ月経った 2010年9月、私は妻と、四谷三丁目のスターバックスで 1 杯のドリップコーヒーを分け合い、将来について不安を募らせながら外を眺めていました。

腰かけていたカウンター越しのテラスに、愛犬をベビーカーに乗せた老婦人が現れました。老婦人は店内でマンゴー味のフラペチーノを注文するとベビーカーのところへ戻り、愛犬にフラペチーノを食べさせ始めました。

貯金8万円のどん底が起業の原動力に

この瞬間、私は言い表しようのない衝撃を受けました。

品のいい飼い主に大事にされているこの犬は、フラペチーノをおいしそうに食べている。片や一大決心をして財務省を辞め留学した私は、無職でお金もなく、昼間から 1 杯のコーヒーを妻とシェアしている。自分は世の中に必要とされていない人間なのではないか──。

このとき、経済的にも切羽詰まっていました。生活費が残り2~3ヵ月分しかないという現実を突きつけられると、近所のスーパーの野菜の値段に敏感になります。一袋200円だったジャガイモが230円になると、体がビクッと反応しました。

やや遅れて頭が「ジャガイモが値上がりしたけれど、今日はカレーを食べられるかな」と考えます。野菜を買うのをためらうほどなので、果物はもちろん贅沢品でした。

このどん底での経験が、私のその後の人生を鼓舞してくれています。どん底から4年後、マッキンゼーを退職して起業しようと思い立った時、「失敗するかもしれない」という不安が頭をよぎりました。

統計上、 7 割の会社が創業から 3 年以内に倒産します。真っ先に思い浮かんだのが、あの“フラペチーノ事件”でした。うまくいかなくても大丈夫だ、あの時ほどひどい境遇にはならないだろう、と腹をくくりました。 どん底を見た経験が、私を精神的に強くしてくれた ように思います。

この翌月、私はマッキンゼーから内定をもらいました。夫婦の貯金は 8 万円にまで減っており、まさに間一髪のタイミングでした。

(写真:ロイター/アフロ)

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