はじめに

持続可能な高い利益成長が実現できる企業に長期投資

株価は長期的には企業の利益に収斂する。株価は短期で予測できない。ではどうすれば良いのか。それについて、「持続可能な高い利益成長が実現できる企業に長期投資をすることが長期的に高いリターンを低いリスクで獲得できる」というのが私どもの答えで、挑戦していることです。

こちらが3点目のポイントになります。持続可能な高い利益成長ができる企業というのがどのような企業かと申しますと、始めにご紹介しましたシスメックス社や、ダイキン社がその代表例にあたります。その企業にどういった特長があるのか、こういった企業を見つけるには、どのようなことを大切にして企業を見ていけばいいかということを次にご紹介します。

1. 参入障壁

過去、高い成長を遂げてきた企業でも、すぐに競合他社にシェアを奪われてしまう可能性があれば、持続的な成長はあり得ないと思います。過去、どうして成長したのか、これから持続的な成長ができるのかという分析をするには、その企業がどんな参入障壁を持っているかを理解することが大切なポイントになります。

シスメックス社の例でいいますと、血液検査に特化して長年研究開発をしてきましたので、その分野での特許を取得しています。また、例えば他の医療機器メーカーがその分野に投資をしたからといって、とても半年や1年、2年で、同社と同じような技術力を構築することはできず、同社は耐久的なノウハウを持っていると言えます。

優れた技術力を武器に世界トップのマーケットシェアを開拓していますので、これも半年や数年で、そのマーケットシェアを他社が奪うということは難しいと言えます。また、販売しているものは医療機器で高額ですので、一度購入するとそう簡単に買い替えることはないという点も挙げられます。このように、特許、ノウハウ、マーケットシェアと非常に高い参入障壁を持っていると言えるかと思います。

2. 持続可能性

次に持続可能性についてです。こちらについては経営陣の質が関わってきます。長期的な視点で研究開発に投資できるか。短期的なコストカットを優先して環境を犠牲にするような工場をつくったり、労働問題を抱えていたりしないか。他にも離職率に異常はないか、環境への取組みはどうか、社員に対する考え方や評価方法、給与体系といった分野の経営陣の考え方、取組みをしっかりと掘り下げて見ていく必要があります。

成長も一過性のものではなく、高齢化やマーケットシェアの拡大などの一過性ではないと言える成長の源泉があるかを理解するのが大切だと考えています。弊社のファンドマネージャーは、投資判断をする際には、1.その企業のビジネスモデルは、自らやってみたいと思えるほど本当におもしろいか、2.その投資先企業の経営者の方々と一緒に働いてみたいと思えるかという2つの質問をいつも自らに問いかけ、大切にしています。1つ目が参入障壁にあたるところ、2つ目が持続可能性にあたるところです。

3. 成長の源泉

成長の源泉については弊社ではメガトレンドをつかんでいるかという点をみています。いくら参入障壁を持っていて、素晴らしい経営者が経営していても、その成長の源泉に持続性がなかったら成長は難しいのではないでしょうか。メガトレンドというのは、政治や政権の変化、景気動向からの影響をあまり受けず、成長し続ける、右肩上がりになるであろうというトレンドのことをいいます。具体的には、新興国における中間層の増加、西洋文化の浸透、インフラ整備、世界で進むデジタル化、効率化、高齢化などです。景気動向に多少左右されることはあっても、長期的なトレンドが変化することは皆さまもイメージできるかと思います。

もう一度、会社に置き換えてご説明します。1987年にモリス・チャンという創業者が設立した台湾セミコンダクター社です。主に製造ライン(工場)を持たない企業から半導体製品の製造を受託する世界最大の会社です。弊社も2007年から投資を始め、現在も非常に大きな金額を投資しております。

同社の参入障壁は、技術力と生産能力、そして受託生産というビジネスモデルにあるのですが、高い技術力を維持する、強くしていくために、毎年1兆円以上、直近では1.5兆円の設備投資を行っています。

世界最大級の自動車会社のトヨタ社の設備投資が約1兆円~1.3兆円なので、それより大きな金額を台湾セミコンダクターは設備投資に使っているのです。この投資により、世界トップ基準の高機能・高付加価値の半導体が製造を可能となり、競合他社に比べて約3倍の売上、高機能の半導体において世界で約7割のシェアを獲得しています。最先端のものをつくりたければ、台湾セミコンダクターと一緒につくるしかないといった状況が生じており、高い参入障壁を築いていると言えると思います。

また、持続可能性というところでは、偉大な創業者が今年6月に会長を退任しますが、4年以上かけて次世代への引き継ぎを進めていました。創業者がつくったカルチャーは一朝一夕で築けるものではないので、それが1つの持続可能性につながっていると考えています。経営を引き継いだ経営者からも、今後も技術的有意性や生産能力の向上のために、積極的な設備投資を行っていくといった経営方針を変えないことを確認しています。

また、工場を持っている会社なので、環境や社会への関わり方も非常に重要になってきますが、同社は電力や二酸化炭素、水の排出量について、どうしたら減らしていけるのか考え、またその結果まで公表しています。環境問題に正面から向き合っており、今後の成長の上では重要な課題だということを社内でしっかり周知されているという特徴もあります。

労働環境についても社員の残業時間や給与水準の平均を公開しており、業界の中でどういったポジションにあるのかということを示しています。このような情報は、投資家にとっても非常に有益ですし、そこで働いている社員の方々にとっても、自分たちはどのような会社で働いていてどのような評価を受けているのかが分かるので、持続可能性につながっていると考えています。

成長の源泉に関しても、今まではスマホが爆発的に増えたことや、仮想通貨のマイニング需要ということで大きく成長してきたのですが、今後も3年、5年、10年の間でデジタル化というのは加速していくと考えておりますので、同社はその恩恵も受け続けられると考えます。まさに非常に高い参入障壁を持っていて、持続可能性を持った会社だと判断しています。

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