はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、潤沢な金融資産を保有する45歳の主婦。住宅ローン減税が終了するタイミングでこの資産を繰り上げ返済に回すか、投資に回すか悩んでいるといいます。FPの高山一恵氏がお答えします。
今年度末で住宅ローンが10年を迎え、住宅ローン減税が終わります。今ある現金をローンの返済にあてるべきか、ローンを返済せずに運用に回すべきか、悩んでいます。現在、住宅ローンは変動金利0.6%で借りています。
今のところ夫婦でiDeCoとNISAは始める予定です。子供のためにジュニアNISAも始めようと思っています。それ以外の余剰金で新たに投資信託を購入するか、もしくは早々に住宅ローンを返済してしまうか、どちらがいいのでしょうか。娘の高校、大学の学費がこれから必要になってくるので、あまりリスクは取りたくないと考えています。アドバイスよろしくお願いいたします。
〈相談者プロフィール〉
・女性、45歳、既婚(夫:会社員)、子供1人(私立中2)
・職業:パート
・居住形態:持ち家(戸建て)
・手取りの世帯月収:65万円
(夫:55万円、妻:10万円)
・手取り年間ボーナス:200万円(夫)
・毎月の支出目安:55万円ほど
・貯金:3600万円
・投資:600万円
・負債(住宅ローン):4000万円
高山: ご相談ありがとうございます。今ある貯蓄を資産運用に回すか、住宅ローンの繰上げ返済にあてるか、迷われているとのこと。
現在の住宅ローンの金利水準は、史上最低水準の低さですから、運用した方が良いのではと迷ってしまうのもわかります。とはいえ、投資は増える可能性もありますが、減る可能性もあります。ご相談者さんは、貯金もそれなりにお持ちなので、バランスをとって両方行うのが良いのではないかと思います。詳細な状況を把握できていないので、考え方のポイントをお伝えできればと思います。
まずは、手元にある資産を目的別に3つに整理する
ご相談者さんは、既に貯金が3600万円、投資商品の時価が600万円と、まとまった資産をお持ちですが、まずは、資産運用をするにしても、繰上げ返済をするにしても、どれ位の金額を使えるのかを把握することが大切です。そのためには、貯金の3600万円の使い道を目的別に整理してみましょう。
まず、お金を 「日々出入りするお金」「5年以内に使い道が決まっているお金」「将来のためのお金」 に分けてみましょう。
日々出入りするお金とは、もしもの場合に備えるお金や日常生活費です。もしもの場合に備えて、生活費の6ヵ月~1年分は確保しておきましょう。貯蓄がまったくない人の場合は、まずは生活費の6ヶ月〜1年分を目指したいところ。日々出入りするお金は出し入れしやすい普通預金口座で貯めておくとよいでしょう。
子どもの教育費や留学費用など、5年以内に使い道が決まっているお金は、使うまでに時間はありますが、使う時に元本が割れていると困りますから、普通預金よりも少し利回りがよく安全性が高い定期預金や国債などへ預けるとよいでしょう。
日々出入りするお金、5年以内に使い道が決まっているお金を把握したら、それ以外の余裕資金で、資産運用や繰上げ返済を考えることになります。現在借り入れをしている住宅ローンの金利が0.6%ということなので、住宅ローンの金利以上の利回りで運用できる商品は多数あるでしょう。ですから、余裕資金を運用に回すのも良いですが、これから将来に向けて、iDeCoやNISAなどの投資も始めるようですので、余裕資金については、一部を運用にまわしつつ、一部のお金は繰上げ返済に回して両方行うのがよいでしょう。