はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、マイホームを新築したものの、家計への負担を考えると地震保険への加入をためらう35歳の男性。地震保険の加入メリットや、加入するとしたら、どれくらいの補償が必要になるのかについて、FPの平野泰嗣氏がお答えします。
親に実家の敷地の一部を提供してもらい、念願のマイホームを建てることができました。住宅ローンを組んだ金融機関の担当者から、火災保険と合わせて地震保険に入るように勧められたのですが、地震保険料が思った以上に高く、家計への負担が大きいので、加入しようかどうか迷っています。最近、南海トラフなど地震リスクが警鐘されているので、地震への備えは気になります。地震保険に入る必要があるのか、もし入る場合、どのくらいの補償額にしたらよいのか、アドバイスお願いします。
<相談者プロフィール>
・男性、35歳、既婚(妻:33歳・パート)、子ども1人(4歳)
・職業:会社員
・居住形態:戸建て
(埼玉県、木造・2階建てを2,000万円で新築)
・手取り世帯月収:36万円
夫:30万円、妻:6万円
・手取り年間ボーナス:約120万円
・貯金:300万円
(マイホーム購入直後で減っている)
・住宅ローン残高1,500万円
【家計の状況】
・毎月の支出:30万円
(うち、住宅ローンの返済5万円)
・毎月の貯金:6万円(児童手当は含まない)
平野: 地震への備えとして、地震保険に対する関心は高まっています。火災保険に地震保険を付帯して契約する割合は年々上昇していて、2017年度は63%でおよそ6割。残りの4割は地震保険に未加入だそうです。地震保険は必要だと思うけれども、家計への負担が気になるという結果を表わしているのかもしれません。
今回は、家を新築した場合、地震保険に加入する必要があるのか、加入するとした場合、どのくらいの補償が必要かについて解説します。
火災保険ではカバーできない?地震保険の補償範囲
地震保険は、建物と家財について、地震・噴火・津波などによる損害を補償する保険です。家を建てた場合、多くの人は火災保険に加入すると思いますが、火災保険では、地震などによる損害は補償されません。また、地震などによって発生した火災による延焼被害についても補償されません。火災保険でカバーできない、これらの損害に備えるためには、地震保険に加入する必要があります。
地震災害などによる被害は甚大になることが予想されるため、民間の保険会社だけでは保険を引き受けることが困難です。そのため、地震保険は国と保険会社が法律に基づいて、共同で運営する仕組みになっています。この法律によって、地震保険は、建物や家財を補償する火災保険とセットで加入することになっており、また、保険金額も、火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内(上限金額:建物5,000万円、家財1,000万円)と決められています。
地震保険は、補償内容も保険料も各保険会社で同じ内容となっています。また、地震保険の保険料は公共性が高いため、利潤が織り込まれておらず、また、火災保険とセットで加入する方式をとっているため、可能な限り低く抑えられています。
地震保険料は、建物の構造(主に木造か、鉄骨・鉄筋コンクリート造かによる)と建物の所在地(都道府県ごと)によって決められています。
ここでは詳しい説明は省きますが、相談者様の保険料を計算してみました。物件の所在地は埼玉県で建物構造は木造、建築費は2,000万円かかったとのことなので、火災保険の保険金額を2,000万円とすると、地震保険の保険金額は1,000万円となり、1年間の保険料は、32,000円です。新築ということなので、築年数割引10%が適用されるので、28,800円となります。これに家財の火災保険の保険金額を1,000万円とすると、地震保険の保険金額は500万円となり、1年間の保険料は14,400円です。建物・家財の合計で43,200円と計算されます。確かに少ない金額ではありません。