はじめに

貿易をめぐる米中の対立、いわゆる「米中貿易戦争」が激化しています。両国の対立は本質的には非常に根深く、短期間で解決する問題ではありません。

このような波乱含みのマーケットで、投資経験の浅い方にぜひ覚えておいていただきたいキーワードが、2つ存在します。この2つのキーワードを念頭に置いて銘柄を選ぶと、どんな効果が期待できるのでしょうか。


徐々に現れてきた負の影響

経済的にも軍事的にも長らく世界の覇権を握ってきた米国は、成長著しく両面でその覇権を脅かすまでの存在になった中国のこれ以上の台頭を許したくない、と考えています。その対立の象徴が今回の貿易戦争であり、まずは経済面で中国の成長をペースダウンさせたいと米国大統領と米国議会は考えているとみられます。

それ以外にも、ドナルド・トランプ大統領は来年に次の大統領選を控えており、支持集めにつなげたいとの狙いも明らかでしょう。GALLUP社の調査によれば、現在のトランプ大統領への支持率は就任後最高の水準にあります。米国民も一定程度「中国に物申す大統領」を支持しているということでしょう。

ここへきて、貿易対立の激化による両国経済への負の影響が徐々に現れてきています。下図は、米国と中国の製造業購買担当者景況指数(PMI)の推移を示したものです。

PMI

これは多数の企業に景気が良くなるか悪くなるかなどの景況感の体感をアンケートしたもので、50を上回ると「景気改善」、下回ると「景気悪化」を示唆します。また、50を上回る・下回ることのほかに、指数自体のトレンドも大切です。

グラフを見ていただくと、中国のPMIは50を下回っています。また、米国のPMI(ISM製造業景況指数)は、まだ50は上回っているものの明らかな下降トレンドにあることがご覧いただけるでしょう。

このように、米中の対立によって両国の経済は明らかに鈍化傾向をたどっています。足元で世界的に株価が調整基調にあるのは、このような景気悪化を警戒してのものといえます。

米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長が景気悪化の際には利下げも厭(いと)わない姿勢を示したことで一時的に株価は反発しましたが、今後も要警戒のマーケットは続きそうです。

「景気敏感銘柄」とは?

このような波乱含みのマーケットで、投資される方にぜひ覚えておいていただきたいキーワードが「景気敏感銘柄」と「ディフェンシブ銘柄」です。

「景気敏感銘柄」はその名の通り、景気に敏感に反応する株式のことを指しており、「景気が良くなるぞ」という時に株価が上昇します。鉄鋼や機械などが代表的な景気敏感株として知られています。

景気が良くなる時には、たくさんのモノが売れるため、当然、企業はたくさんのモノを作ろうとします。たくさんのモノを作ろうとする時には、モノを作るための機械やその材料となる金属の需要が高まります。

そうすると、動きの早い投資家は「これから機械や鉄鋼の会社の業績は良くなるはずだ!今のうちに株を買っておこう!」となり、株価が上昇していくというわけです。そして、そういった業種の銘柄は、株価の後を追うように業績が改善していく場合が多くあります。

反対に、景気がこれから悪くなるという時には、モノを作ってもあまり売れない状況がやって来ます。ですから、モノを作るための機械や材料となる鉄鋼の需要は減っていくことになります。

そうすると、投資家は「業績が悪くなる前に早く株を売ろう!」となって、景気敏感株の株価は下落していきます。この場合も、株価の後を追うように業績が悪化していく場合が多いです。

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