はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、今まであまり貯蓄をしてこなかったことを後悔しているという40代の共働き主婦。子どもを遅くに授かったため、教育費と老後資金の準備が重なるのに加え、親の介護費用も必要になる可能性があるといいます。FPの渡邊裕介氏がお答えします。
子どもを遅くに授かりましたが、共働きで余裕があったため、旅行や買い物などに好きなようにお金を使っていたため、恥ずかしながら貯金があまりありません。その上、育休後は時短勤務になり収入が激減し思うように貯めることもできません。教育費に加え自分たちの老後資金の準備も必要な上に、親が高齢のため10年以内には介護が必要になるかもしれず、今後の家計を考えると貯め時を逃したことを後悔しています。
保険は、出産前からのものに入りっぱなしで医療保険のみです。2人とも死亡保障を備えていません。私は3年前に手術をしているため、あと2年経たないと保険に入れません。夫の死亡保険は資料を取り寄せたものの、そのままになっています。
老後は、夫の実家(ローン完済)を相続して、そちらに住む予定です。私は65歳の定年まで勤める予定で、子どもが小学生のうちは時短勤務にするつもりです。私の退職金はおそらく2000万円ほど出ると思います。また2年前から、確定拠出年金を月1.2万円かけていますが、あまり運用状況は良くありません(国内、海外の株式と債券のみ)。旦那は自営業なので、定年はなく働けるまで働く予定です。夫の退職金(小規模企業共済)は60歳時点で960万円の予定です。
できれば、これからもう1人子どもが欲しいと考えております。中学までは公立で考えていますが、本人の希望によっては中学から私立に入れても問題ない状況にしてあげたいと思っています。教育費、老後資金など、どのように家計管理をしていくのが良いかアドバイスをお願いします。
<相談者プロフィール>
・女性、42歳、既婚(夫:46歳、自営業)、子ども1人(2歳)
・職業:会社員(時短勤務)
・居住形態:賃貸
・毎月の世帯の手取り金額:55万円
(夫:30万円、妻:25万円)
・年間の手取りボーナス額:80万円(妻)
・毎月の世帯の支出目安:47万円
【支出の内訳】
・住居費:16.6万円(駐車場代含む)
・食費:8.6万円
・水道光熱費:4.5万円
・教育費:1.8万円
・保険料:2.2万円(夫の国民年金含む)
・通信費:1.8万円
・車両費:3万円
・お小遣い:5万円
・日用品:1.5万円
・その他:2万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:8万円
(定期3万円、小規模企業共済5万円)
・現在の貯蓄総額:830万円
(預貯金400万円、財形250万円、小規模企業共済180万円)
・現在の投資総額:25万円
・現在の負債総額:50万円(車のローン)
渡邊: こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。将来の教育費・老後資金準備のご相談ですね。
共働きで余裕があったため、旅行や買い物など好きなようにお金を使い、貯め時を逃したと後悔しているようですが、確かに早めに準備するとより効果はありますが、後悔しても仕方がありません。理想の生活を実現するために今から何ができるのか、何をするべきかを考え実行することが重要です。一緒に考えていきましょう。
キャッシュフロー表で将来の家計を可視化する
まず、ご相談者のこれからの生活のシミュレーションを作成しました。
<前提条件>
・ 第二子は一年後に出産、育休産休取得後、2歳より時短勤務にて復職予定。復職後は現在と同じ収入とします。
・ ご主人は自営業で収入は現状維持、奥様の収入は0.5%ずつ上昇。60歳以降は年収360万円とします。
・ ご主人は3年前までは給与所得で厚生年金加入であったものとします。
・ 生活費については、小規模共済拠出以外の月3万円の貯蓄に合わせ、毎年1%上昇し、お子さま就労時には直前の80%を新たな生活費とします。
・ 住居については、65歳で実家を相続し、固定資産税等、年間住居費20万円と仮定(リフォーム等費用は加味していません)。
・ 教育費については、中学・高校は私立、大学は私立文系自宅通いとしています。
・ 自動車ローンは月2万円程度を二年間想定。
・ 小規模共済年間60万円拠出については社保に含み、65歳まで月5万円拠出、一時金受取としています。
第二子の育休終了後より、夫婦お二人とも現状の収入を維持することができれば、順調に貯蓄を増やしていくことはできますが、上の子が私立中学校に入ると教育費の負担が大きくなり、年間の家計の収支だけではまかなうことができず、貯蓄を取り崩すことになります。そして、下の子が中学校に入ると金融資産残高がマイナスになってしまいます。退職金のタイミングにより、一時的に改善するも、その後また取り崩しが続き、78歳で再度マイナスとなります。今からしっかりと家計改善をし、将来に向けての準備が大事ですね。
注意すべきポイントは、大きく3つあります。
(1)お子様を授かったタイミングが比較的年齢を重ねてからなので、教育費負担がご主人65歳以降もかかること。
(2)教育費負担が小さい“中学校にあがるまで”の貯蓄額が低いこと。
(3)リタイア後、公的年金のみだと資産を取り崩しながら生活することになること。