はじめに
年金は減っていく?
2019年8月には年金の財政検証が発表され、「年金が2割減る」という報道がありましたが、これも間違いです。「受け取れる年金額が減る」という意味ではありません。また、インフレになって物価が上がって、実質の手取りが2割減ると言うのでもありません。
この財政検証で言っている「2割減る」というのは、所得代替率のことです。つまり現在の所得代替率の61.7%が、2047年には、50.8%に低下すると言うことが書かれています。
所得代替率という聞き慣れない言葉が出てきますが、これは公的年金の給付水準を示す指数で、現役男性の平均手取り収入額に対する夫婦二人の年金額の割合です。年金の支給額は、1割ぐらい増える、または微増という予測になっています。「年金が2割減る」というのは、報道のミスリーディングなのです。
もちろん、この財政検証が本当に信頼できる数字かといわれると、疑問は残りますが…。所得代替率の数字が、現役男性の数字が手取り額で、年金額の方が税込みになっているなどの問題はあります。
老後資金2000万円は本当に必要なのか?
では、「老後資金は、2,000万円必要なのか?」と言われると、これは必要です。というのが私の答えです。しかし、不足する金額というのは、人それぞれで状況によっても異なります。
いずれにせよ、ある程度の老後資金を用意しておくことは必要です。厚生年金保険、国民年金保険などというように、公的年金とは保険なのです。
公的年金は、長生きをしたときのリスクに対応している保険です。それ以外にも遺族年金のように死亡保険の役割や、障害年金のように働けなくなったときの保障の機能もあるのです。老後の生活は、公的年金という長生きの保険と、老後資金の準備という自助努力によって維持していくものなのです。
とはいえ、それだけの資金を貯めることができない人や、年金の受給額が少ない人は、どうすればいいのかというと、その場合には、やはりできるだけ長く働く必要があります。