はじめに

美容外科で生きた、心臓外科の経験

F美容外科では、院長の手術の第一助手に付きました。繊細かつ長時間の手術ですが、バイパス手術で細い糸を扱いなれていた園田先生にはお手の物で、手術終了後に正式契約をオファーされました。

園田先生にとっても、美容外科手術は楽しかったようです。E県立病院で辛かったのは書類作成や夜中の呼出であり、「オレ、手術そのものは好きだったんだ」と、園田先生は外科医としての初心を思い出したのです。

2週間の有休期間が終わると、迷うことなくE県立病院に辞表を出しました。

顔の全面改造で大人気

本来、努力家で器用な園田先生は、水を得た魚のように美容外科のテクニックを修得してゆきました。同僚は、「初期研修のみで美容外科に就職した若手」のような、フリーター系の医師が多かったので、外科医としてきちんとトレーニングを積んだ園田先生のライバルにはなりません。就職の数か月後には、副院長に抜擢されました。働いた分は業績連動ボーナスで還元されるので、「脱毛しかできないフリーター医師」とは3~5倍の報酬差があります。
園田先生は胸部外科出身なので、胸の軟骨を加工して顔に移植する手術が得意でした。自然で縫い目の見えない仕上がりはSNSなどで拡散され、アジア系富裕層の人気を集めました。1,000万円近くをつぎ込んで顔の全面改造を依頼されるケースが相次ぎ、園田先生はそれに応えました。そして、園田先生は病院契約のマンションや車両費の分を合わせると、県立病院時代の5倍以上の月収をもらうようになりました。

バツイチ外科医は恋愛無双

別居中の妻子ですが、E県立病院を辞める時に「うつ病で病院を辞めることになったから、保険証を返送して欲しい」とメールしたところ、保険証と共に離婚届が同封されてきました。引っ越し作業のついでに、園田先生は書類にサインして返送しました。

新居は港区のタワーマンションです。就職祝いに院長がポルシェを契約してくれましたが、園田先生は新しい手術を覚えるのに必死で、マンションの地下ガレージでカバーを被せられたまま放置されているようです。

週末になると美容外科の同僚医師が、派手目な女性の集まるパーティーに連れ出してくれるようになりました。また、「バツイチ外科医」として出会い系サイトにも登録すると、高身長・高年収の園田先生は多数の女性の申し込みを受けるようになり、デートを楽しむ日々が再開しました。

また、F美容外科に再就職したことを知った元妻は、向こうから積極的に面会交流を求めるようになりました。「相談したいことがある」と、露出の多い服を着てマンションのロビーに立っていたこともありますが、近くのコーヒーショップに案内して話を聞きました。