はじめに

地方公立病院は弱肉強食の時代へ

2019年9月、厚生労働省は全国の公立病院のうち「診療実績が乏しい」と判断した424病院を実名で公表し、統廃合を強く促しました。そこには前職場だったE県立病院も含まれていました。園田先生が辞めた後も中堅外科医の辞職が続いて手術件数は激減し、かといって窓際管理職をリストラすることもなかったので、赤字は増える一方だったようで、統廃合は不可避でしょう。

朝のコーヒーを片手にネットでそのニュースを読んだ園田先生は、「あの院長、今頃は顔を真っ赤にして怒ってるだろうな」と、少し思い出し笑いしました。そして気分を切り替えて、今日の手術患者データの確認作業に戻りました。

2003年卒医師は「当たり年」

園田先生の元には医師転職サイトから紹介メールがしょっちゅう来ます。人材派遣業者の間では、「2003年卒医師は、3倍の下っ端生活で鍛えられた当たり年」として高く評価されています。特に園田先生のように「自分の専門分野は高く、裾野も広い」人材は重宝されているのです。

また2004年から「幅広い診療能力の習得」を目指して始まった新研修医制度ですが、現実には権利意識が高く、時間外や専門外を見たがらない医師が急増したので、医師転職市場での評価は高くありません。

昨今の「働き方改革」の中で、「石の上にも三年」「艱難汝を玉にする」などのセリフはパワハラ扱いされかねない雰囲気ですが、新人が一流の仕事人に成長するには、昔も今も「長時間労働でスキルを磨く」期間が不可欠なのかもしれません。

日本の総合病院の多くは公立病院であり、公務員的な年功序列制度が色濃く残っていますが、「脱・年功序列」的な病院も都市部を中心に増えつつあり、園田先生のような働き盛りの医師を惹き付けているようです。