はじめに

次の常勤先を見つけるまでのつもりだったけど

「次の病院を見つけるまで」と考えて始めたフリーランス産科医生活ですが、かれこれ10年近く続いています。院内政治よりも現場仕事が好き、都会よりも放浪旅行が好きだった津田先生には向いていたからかもしれません。

現在では千葉県の産科クリニックをベースに、千葉・茨城・福島県の複数の病院から仕事のポートフォリオを組んでいます。予め仕事をやりくりすれば、収入は減りますが、1週間程度の休暇は取得できます。フリーランス医師仲間には「9か月働いて、3か月海外」というスタイルの先生もいます。

バツイチ、そして息子は

東京から出たがらない産婦人科パート女医の妻とは、「子供達の教育費を出す」という条件で離婚になりました。長男はすんなり医大進学したものの、浪人中の次男の成績は医大を狙うにはイマイチのようでした。千葉の病院で勤務中、バックパックを背負った次男が津田先生を訪ねてきました。「しばらく住まわせて欲しい」とのこと。とりあえず自宅マンションに滞在させて、地位巡業にも同行させるうちに「ママとじいちゃんに医大進学を強要されて全てがイヤになった」と話してくれました。

やがて息子さんは病院近所のコンビニでアルバイトを始め、津田先生が当直中に買い物に行くと、息子さんもコンビニで夜勤中……ということもありました。息子さんはコンビニ仲間のスリランカ人と仲良くなり、津田先生の不在時に家でバイト仲間の外国人を集めて宴会することもあったそうです。息子さんは友人のガイドでスリランカへバックパッカー旅行に出かけ、そこで何かを感じたようで「オレ、国際関係の勉強する!」と宣言し、受験勉強に再び励むようになりました。

広がる「フリーランス医師」というキャリアパス

ドラマ「ドクターX」が始まった2012年頃、「フリーランス医師」と言えば「麻酔科など特殊な科のみ」というのが医療業界での雰囲気でした。しかし2019年現在、「フリーランス 医師」とネット検索すれば、上位表示されるのは整形外科医が目立ちます。その他にも、放射線科医、精神科医、内科医、訪問診療など、数のみならず活躍する分野も広がっていることが伺えます。

地方の医師不足病院でも、フリーランス医師と契約するケースが増えています。2018年から「オンライン診療料」が保険適用となったので、今後はスマホなどを活用した遠隔診断でもフリーランス医師が活躍することが予想できます。

地方の産科医不足の解決法

地方の産科病院では60~80代医師が現役で現場を守っており、津田先生が若手扱いされることもよくあります。若手医師は産婦人科を選ばないか、選んでも福利厚生の整った都会の大病院を選ぶので、地方で産婦人科医をやろうとする若手医師はなかなか現れません。

先日、厚労省は「2019年の出生数が約86万人」と発表し、その急激な少子化の進行に日本中が驚愕しました。地方の産科医不足は、結局のところ少子化の進行によって解決されることになりそうです。


日本の医療界では封建的な医局制度は衰退し、インターネットを活用したフリーランスが一大勢力となって、雇用の流動化が進みつつあります。一般企業でも副業解禁、タニタの社員フリーランス制度など、医療界のみならず日本中の職場で働き方が変わりつつあり、この流れが戻ることはないでしょう。

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