はじめに
60歳でiDeCo、65歳で退職一時金を受け取ると税額は1万2,500円
60歳でiDeCoを受け取る時に税金はかかりません。iDeCoの受取額300万円に対して退職所得控除400万円ですから、引ききれないため税金はゼロになります。その後、65歳で退職一時金を受け取る場合には「退職金の5年ルール」を利用することができます。
退職金の5年ルールとは“過去4年以内に「他の退職金」がある場合は、退職所得控除の計算に一定の調整が入る”ということです。つまり5年以上あけて、受け取るタイミングをずらすと退職所得控除に調整が入らず税制上有利に退職金を受け取ることができます。
このルールに基づくと退職一時金1,200万円にかかる税金は以下の計算より1万2,500円となります。
退職所得(1,200万円-1,150万円)×1/2=25万円
25万円×5%(所得税の税率)=1万2,500円
65歳に退職一時金、70歳でiDeCoを受け取ると税額は9万円
iDeCoの受け取りは60歳から70歳まで任意に決めることができます。では、iDeCoの受け取りを後にずらすとどうなるのでしょうか?
実はiDeCoの受け取りには「退職金の5年ルール」は利用できず、前年以前14年内に他の退職金がある場合、退職所得控除の重複分が減額されてしまいます。
つまり 65歳に退職一時金を受け取り5年後の70歳にiDeCoを受け取ると、iDeCoに加入していた10年は勤務期間に重複するのでiDeCoの退職所得控除は無くなります。
なお、70歳までiDeCoを続けた場合、拠出期間10年と運用期間10年を合わせて20年となりますが、退職所得控除の計算上利用できる勤続年数は10年(拠出期間のみ)となるので注意が必要です。
65歳の退職一時金1,200万円の税額は1万2,500円と変わらずですが、iDeCo受け取り時に税金がかかることになります。60歳時点で300万円のiDeCo資産を70歳まで10年間運用することになりますが、ここでは元本確保型の商品で運用し手数料分を考慮して300万円のままと仮定します。
課税所得は150万円「(300万円-0円)×1/2」となり所得税の税率5%を掛けると7万5,000円です。退職一時金と合わせて9万円の税金がかかります。
少しわかりにくいと感じられるかもしれませんが、iDeCo(個人型)やDC(企業型)も含めて確定拠出年金を利用している人に知っておいていただきたいことは「確定拠出年金を5年以上先に受け取ることで退職金をお得に受け取れる」ことです。
なお、自営業の場合、小規模企業共済などを利用している人もいるかと思いますが、この場合もiDeCoファーストと覚えておきましょう。
最後になりますが、今回は退職金を一括で受け取る時の税制をメインにお話しましたが、受け取る方法や時期については税金だけではなくライフプラン全体を考えて決めることが重要であることを付け加えておきます。