はじめに

2020年の金融政策は現状維持か

――ドルが買われた一方で、それを大きく上回るような円買いもなかったというわけですね。

そもそも円の取扱高自体が細っているという事情があります。その背景には、日本銀行の金融政策をめぐるテーマ性の乏しさも影響しているかと思います。量的緩和をやり尽くし、マイナス金利政策の副作用が指指される日銀の「次の一手」については、もはや注目する余地がありません。

為替市場における円のプレゼンス低下は数字に現れています。国際決済銀行(BIS)が3年ごとに実施する外為調査が今年発表されました。世界の為替取扱高に占める円のシェアは、2016年調査に比べて2.4%ポイントも低下しました。前回調査からシェアが減少している主要通貨は円くらいです。

地域別に見ても、かつては英、米に続いて世界3位だった東京市場の為替取扱高は、今やシンガポールと香港の後塵を拝し、5位まで順位を落としています。円と東京マーケットの人気が凋落しており、売買高が細り、動意が出ず、動意が出ないから円を取引しようとするインセンティブも細るという悪循環に陥っている面もありそうです。

――この状況は2020年も続くのでしょうか。

2020年は米国大統領選が控えており、再選を狙うドナルド・トランプ大統領が財政拡張や減税を実施し、経済を下支えすると考えられます。米国景気はもう天井に達していますが、2020年のうちに大きく腰折れすることを容認するとも考えにくい状況でしょう。

大統領選挙の年に株価が調整を迫られるようなことは基本的に許容されないのだとすれば、FRBが再び利下げを強いられることもありそうです。

そもそも企業収益が悪化しているにもかかわらず、主要株価指数が史上最高値を更新し続けているのは、FRBが緩和を続けてくれるからというのが前提でしょう。2020年のFRBの金融政策は良くて現状維持、場合によっては1回の利下げはあるとみています。

しかし、今のFRBが示している金利見通し、いわゆる「ドットチャート」では、今後3年でほぼ政策金利を動かさない見通しになってしまっています。これが本当に実現すれば、3年連続で「動かない相場」の記録を更新する可能性も捨てきれません。政策金利であるFF金利が動かなければ、米金利も世界の金利も大きく動くきっかけが掴めません。

こうなってくると、ドル円相場を動かすような材料は、もう米中貿易戦争や米大統領選挙、そして2020年6月末に決断が迫られるブレグジットの行方ぐらいしかありません。結局は2020年もトランプ大統領の一挙手一投足を筆頭に、政治的な材料に振らされる相場が続くのではないでしょうか。レンジは1ドル101~111円程度を予想しています。

2020年は無風でも2021年は景色が変わる?

――2020年の金融政策に大きな動きはなさそうですね。そもそも2018年は利上げの年だったのに、2019年は一転して3度も利下げしたことには違和感を覚えます。

政策金利とは本来、失業率や物価など景気を示す指標に対応して調節するものですが、2019年の米国の雇用は堅調で、物価上昇率もそれほど低迷はしていませんでした。

FRBは2019年の利下げを「世界経済の下振れリスクにフォワードルッキングに(先を見越して)対応した予防的な利下げ」と説明していますが、結局は2018年末から2019年初頭の株価下落が発端になっているのは明らかです。トランプ大統領による利下げ圧力も無関係とは思えません。是非はともかくとして、政策金利は株価に大きく影響を受けているのが近年の傾向です。

周知の通り、株価のような市況は、失業率や物価のような基礎的経済指標よりも早く・大きく動きます。株価が崩れるたびに利下げを繰り返していたら、利下げカードは急速に失われ、本当に不況が訪れた時に打つ手がなくなってしまうということなりかねません。

過去の利下げ局面を振り返ってみましょう。今回の利下げ局面は2.50%という政策金利の水準からスタートしました。その前の利下げ局面である2007年8月では、5.25%からスタートしました。さらにその前の利下げ局面は6.50%からスタートしていました。

そして今は1.75%です。1回0.25ポイントの利下げと仮定した場合、あと3回利下げすると政策金利は1%、7回利下げするとゼロ金利です。FRBとてカードは着々と減ってきています。