はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ

今回の相談者は、婚約者が高級外車をローンで購入してしまったという20代フリーランスの女性。車を維持しつつ、出産や住宅購入に向けて、どのように資金計画を立てていけばよいのでしょうか? FPの高山一惠氏がお答えします。

婚約者が昨年、自分の年収とほぼ同額の外車を6年ローンで購入していました。議論の末、いまは車を手放すことはしないという話になりましたが、現実的にこの先どういう人生設計をすべきか見失いつつあります。私がフリーランスでいつ収入が激減するかわからないので、なおさら不安で仕方がありません。子どもは何人なら無理がないのか、住宅はいつになったら買えるのか、プロからの意見が欲しいです。

<相談者プロフィール>
・女性、28歳、婚約中(相手:33歳)
・職業:自営業
・居住形態:賃貸
・毎月の手取り金額:44万~69万円
(相談者:15万~40万円、婚約者:29万円)
・年間の手取りボーナス額:150万円(婚約者)
・毎月の世帯の支出目安:35万円ほど

【支出の内訳】
・住居費:12.3万円
・食費:5万円
・水道光熱費:1.5万円
・生命保険料:なし
・通信費:1万円
・車両費:8.1万円(車ローン6.8万円、駐車場1.3万円)
・お小遣い:6万円
・その他:2万円(カード支払い)

【資産状況】
・毎月の貯蓄額:10~25万円(相談者の収入次第で変動)
・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円
・現在の貯蓄総額:相談者1000万円、婚約者50万円
・現在の投資総額:なし
・現在の負債総額:カーローン残高500万円ほど(月6.9万円×12ヵ月×6年間)

高山: ご質問ありがとうございます。結婚を控えて婚約者の方が大きな買い物をしたとなると、今後の生活設計が心配になりますよね。

先行き不透明な今の時代、首都圏で住宅も子供も車も所有するとなると、なかなか厳しいと思いますが、どんな住宅を希望していて、どんな子どもの教育プランを思い描いているのかによって、首都圏で車を所有しながら子どもも家も持つことができるかは違ってきます。

今回は、住宅や子どもを産むタイミングの考え方についてお話します。

理想とするライフプランを描き、いくら必要なのかを「見える化」する

現在の家計や貯蓄の状況を拝見すると、車のローン返済費以外は、突出して高い支出の項目はなく、貯蓄も毎月きちんとできていますね。

ただし、ご相談者さんが心配している通り、車のローンを支払いながら、今後、住宅の購入、出産もとなると、将来の家計状況が心配になりますよね。いつ頃家を買えば良いのか、いつ頃子供を産めるのか気になるところではあると思います。まずは、具体的にいつ頃子どもがほしいのか、どんな家がほしいのか、価格はどれくらいなのか、自分が思い描く理想のライフプランを作ってみましょう。

いくらの家を購入するのか?首都圏マンションの平均価格は5700万円

ひとくちに家の購入といっても、どこのエリアなのか、マンションなのか、戸建なのか、駅からの距離や広さ、間取りなどによってかかる費用は全く違いますよね。ちなみに、2019年に不動産経済研究所が出した「首都圏のマンション市場動向」を見ると、首都圏のマンションの平均価格は5700万円程度でした。

世帯年収が高いと購入する住宅の価格も高くなりがちですが、仮に5000万円の住宅を、頭金1000万円、4000万円を銀行から融資を受けて購入するとします。借入期間は35年、金利は手堅く見積もって1%とします。そうすると、月々の返済額は11万2000円、住宅ローンの総返済額は約4742万円となります。マンションの場合は、このほかに、管理費や修繕積立金などが月に2万円程度かかります。さらに、家を購入する際には、諸費用や家具、引っ越し代などがかかります。

月々のローン返済額だけを見ると、現在の家賃とそんなに変わらないかもしれませんが、現在婚約者の方の年齢は33歳。35年ローンとなると、繰上げ返済をしなければ68歳までローンが残ります。仮に返済期間を30年にすると、月々の返済額は約12万8000円になり、月1万6000円支払い額が増えます。

教育費は子供1人につき、オール公立で1000万円

一方、教育費についてですが、これもお子さんを育てるエリアや教育プランによってかかる費用は相当変わります。

現在は、「幼児教育・保育無償化」や「高等学校等就学支援金制度」など、教育費を軽減する国の制度がありますので、制度を利用するかしないかなどによっても変わってきますが、文部科学省「子どもの学習費調査2018」、「日本学生支援機学生生活調査2016」を見ると、子ども1人につき、幼稚園から大学まで公立の場合には合計1000万円程度、オール私立の場合には、合計2500万円程度かかります。

子どもが高校を卒業するまでは、基本的に学費は家計からやりくりしたいところです。先のデータには、小、中、高校、大学でかかる1年間の学費の平均値が記載されています。例えば、公立中学の場合は、学校教育費と学校外活動費合わせて年間で48万円。つまり、毎月4万円を家計から教育費として支払うことになります。私立中学の場合は、学校教育費と学校外活動費合わせて年間で132万円。私立の場合は、毎月10万円以上を家計から捻出する必要があります。教育費のピークである大学費用は、毎月の家計からの捻出だけでは厳しいので子供が18歳になるまでに300~500万円を準備したいところです。

世帯収入の7~8割程度でマネープランを考える

このように、住宅も教育もある程度具体的に思い描くことにより、かかる費用が見える化されるので、現在の家計から考えて無理がないかどうか、修正が必要な場合にはどの程度修正がする必要があるのかがわかってきます。

将来にわたり、簡単な収支を知りたい場合には、日本FP協会が将来の収支を予測できるキャッシュフロー表のツールを提供しているので、作成してみるとよいでしょう。ざっくりとでもキャッシュフロー表を作成することで、住宅購入や子供を生む時期などの判断に役立ちます。

これからは、社会保険料や税金の負担は増え、お給料は右肩上がりには上がらない傾向にあります。また、ご相談者さんも収入の増減があるフリーランスですし、お子さんが生まれた場合には、一時的かもしれませんが、収入が減ってしまう可能性も高いでしょう。そこで、今後の世帯収入は現在の7~8割程度と考えてマネープランを考えると良いでしょう。

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