はじめに

7年で倍になるトルコ・リラ建て債券

ところで一部例外の高利回り外国債券といえば、トルコ・リラ建ての債券が有名です。日本のオンライン証券会社でも扱っているところがいくつかあり、実際に個人の人気も高いと言われています。

直近、個人向けに販売されているトルコ・リラ建ての債券だと、たとえばバークレイズ・バンクPLCが発行しているゼロクーポン債があります。ゼロクーポン債とは「割引債」といって、定期的な利払いが行われない代わりに、利子相当分が債券の額面から割り引かれて購入できるというものです。そして償還まで保有すると、額面価格で元本が戻ってくるため、購入価格との差額分が収益になります。

そのトルコ・リラ建てゼロクーポン債ですが、利回りは年11.52%です。額面価格100に対する購入価格は46.60で、これが約7年後の償還時には100になります。たったの7年で元本が倍になるのです。

しかし、これがもし何のリスクもなく実現したら、この債券には大量の資金が集まる一方、米国や日本のように金利の低い国は全く資金調達できなくなります。

でも、現実の国際金融市場ではそのようなことは起こりません。なぜなら、高金利通貨建ての債券をはじめとする金融商品に投資したとしても、通貨安によってリターンが調整されるからです。

長期間続くトルコ・リラ安

そもそも、なぜ金利が高いのかを考えてみて下さい。金利は物価との見合いで決まります。つまり金利が高い国はインフレ国なのです。

たとえばトルコの消費者物価指数の上昇率は年率で12%にもなります。物価が上昇すれば、相対的にお金の価値は低下します。仮に消費者物価指数が今後も年率12%で上昇した場合、トルコ・リラを現金のままで持っていると、毎年12%ずつお金の価値が目減りしてしまいます。したがって、外国為替市場においてトルコ・リラは、他の低金利国に対して売られ、トルコ・リラ安が進むのです。

実際に為替レートの値動きを見てみましょう。

今から10年前、2010年6月30日時点のトルコ・リラ/円のレートは、1トルコ・リラ=57.350円でした。これが今、いくらなのかというと、2020年6月28日時点で、1トルコ・リラ=15.710円です。この10年間で、トルコ・リラは円に対して72.60%も目減りしたことになります。

トルコ・リラ建ての債券で運用し、トルコ・リラ建てで元本が倍になったとしても、通貨が70%以上も目減りすれば、円ベースのリターンは、「実は宣伝文句ほど大したものではない」ことになります。

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