はじめに
きちんと自分の価値をアピールする
日本ではよく「謙遜は美徳」と言われます。また、「女性は控えめにすべき」といった価値観も一部に残っており、女性が自分の能力をいかんなく発揮していくことは、まだまだ困難な状況と言えるかもしれません。
これは日本だけの問題ではありません。さまざまな調査により、女性は自分の能力を過小評価しがちであると言われています。こうした調査結果を見ると、男性は女性よりも積極的に自己アピールをし*、昇給の交渉をし**、たとえ採用条件に満たなくても応募しますが***、女性は自らそのチャンスを捨てているように思えます。
たとえば、あなたが仕事の成果を上げて評価されたのに、「いえ、全然たいしたことではありません」とか「私なんてまだまだ」などと謙遜していませんか?せっかくいい評価を受けたのに、謙遜するのはNGです。
「このプロジェクトではこういう部分が難しかったですが、無事に成し遂げられたのを誇りに思います。認めていただけて嬉しいです」と、自分自身の能力や価値を積極的に言語化するようにしていきましょう。
自分の価値をアピールすることは、決してはしたないことではありません。主張して当然のことです。過小評価がクセになってしまうと、そのように自己暗示がかかってしまい、いつしか大きなことにチャレンジできなくなってしまいます。
まずは、女性が自分を過小評価しがちな傾向があることを知ったうえで、自分の能力を
認めてあげましょう。そして成功体験を一つ一つ積み上げていくことで、徐々に本当の自信をつけていきましょう。
* 「女性はなぜ男性よりもセルフプロモーションに消極的なのか」 クリスティーン・エクスリー、ジャッド・ケスラー、Diamond ハーバード・ビジネス・レビュー、2020年1月27日
** “Nice Girls Don't Ask” Linda Babcock, Sara Laschever, Michele Gelfand and Deborah Small, Harvard Business Review October 2003 Issue
*** “Why Women Don't Apply for Jobs Unless They're 100% Qualified” Tara Sophia Mohr Harvard Business Review August 25, 2014
人生は四季のようなもの
人生100年時代。誰しも人生にはいろいろなアップダウンがあり、いつも順風満帆とはいきません。女性の場合、出産や育児などで、どうしてもキャリアを中断しなければならないときもあると思います。
また性別や年齢にかかわらず、体調を崩したり、プライベートに問題を抱えたりして、思ったように働けないときも出てくるかもしれません。そんなとき、本人は悔しいかもしれませんが、私は焦らなくていいと言っています。
私の友人の一人でもある、シンガポールの女性エグゼクティブが、こんなことを言っていました。“Life has fourseasons.”これは彼女が、働く女性のためのパネルディスカッションで言った言葉です。
人生は四季のようなもの。冬が来ればまた春が来て、やがて夏も来る。終わらない冬はありません。いまは全力で働けなかったとしても、きっとそのうち働けるときがやってくる。その状態がずっと続くわけではありませんから、それぞれの季節をそのときどきで楽しめばいいのです。
私自身も、いまは仕事を楽しめるようになりましたが、ここに至るまでは迷走していま
した。20代は働き詰めの毎日。今日が何曜日かもわからず、いつも体調がすぐれませんでした。30代は暗黒の時代。仕事もプライベートもうまくいかず、いつ会社を辞めようかと、そればかり考えていました。
しかし40代になって、他人との比較をやめ、自分の軸を意識しだすと、仕事が順調に進むようになりました。そして50代で転職も経験し、いまはもう何があっても大丈夫と思えるようになったのです。
移り変わる季節のように、人生にもいろいろな時期があります。焦らず、腐らず、驕らずに、いまの季節を思う存分に楽しみましょう。
「あなたにお願いしたい」と言われる仕事のコツ88
佐々木順子 著(ぱる出版)