はじめに
「バランスシートの修正」と「現金確保」の関係とは
――どういうことですか。
たとえば1億円の物件をフルローンで購入したとします。すると、この物件の資産は買った瞬間に低く見積もられます。不動産の資産評価は、相続税評価の手法(路線価)で計算されるので、おおむね70%ほどになるんですね。すると、借金に対して資産は低くなる。結果、融資を受けてどんどん物件を増やすと、バランスシートが悪くなり、あるとき銀行から「ちょっと厳しいですね」と融資を断られることになります。
そこで、傾き始めたバランスシートを調整する必要が出てきます。積み木をやる際、傾いてきたら土台部分を調整するように。私が調整のためによくやるのは、単純に「売却」することです。
――売却ですか。
はい。一般的に、ローンで購入して5年、10年と経てば借金はどんどん減っているはずです。一方、物件の売却価格は大きく落ちない。そこで売ってしまえば、借金は減り、さらに物件の売却額と残り借金の差額が現金で入ります。そうして、バランスシートの傾きが修正されるのです。
これは、以前お話しした1億円超えのフルローン物件を買ったときに行った手法です。またいずれ融資が受けられるように、バランスシートの修正目的で売却していくのです。
――その作業を行う中で現金を手元に確保して、不況時の物件購入に充てると…
その通りです。バランスシートの修正は、不況時に現金で物件を購入するための「準備」でもあるわけです。これをきちんとやっておくと、ある意味で“お買い得”な不況時の物件を購入できます。
たまたま現金があったから買えた、ではなく、そのときを見据えて現金を準備しておく。それが不動産投資では大切です。そして、今回出てきた「融資の活用」や「銀行との関係」も、不動産投資を拡大させるには欠かせないものです。
融資や銀行との関係については、次回詳しく伺います。