はじめに
マネックスグループが2020年6月25日に設定した「マネックス・アクティビスト・ファンド(愛称:日本の未来)」は、個人投資家の声を企業経営者との対話につなげるという新しい取り組みをする公募投信として注目されています。
マネックスグループ代表執行役社長CEO松本大氏が「今までの経験とネットワークと、情熱の全てを注ぐ」と語るこのファンドの狙いとは?
起業前に松本氏の下で働き、今は共に企業経営者として親交を深めるマネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介が、松本氏にファンドに込めた思いを聞きました。
機関投資家と同じ体験を個人にも提供
辻:ファンドの投資家が増えると意見をまとめるのも大変そうですが。
松本:もちろん、個人の声をそのまま伝えるのではなく、投資顧問に僕や日本を代表するESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンスの略称、この3つの観点が企業の長期的な成長のために必要とされている)の専門家が加わって、対話したほうが良いことを選んでいきます。ただ、重要なのは個人の意見が反映される仕組みがあることです。
「日本人は金融リテラシーが低い」と言う人がいますが、僕はそれは違うと思っています。バブル経済が崩壊したとき、日本の家計は不動産を売り越し、銀行は買い越しました。不動産を売ったお金で当時6%くらいの利回りがあった日本国債を買い、残りは預金しました。
辻:結果から見るとものすごく正しい選択ですね(笑)。
松本:そうなんです。日本人の多くは、バブルの頂点で不動産を売り、その後、円高とデフレで資産の価値を増やすという、正しいアセット・アロケーションをしたのです。そういう人たちの金融リテラシーが低いはずがありません。
このすばらしい英知を企業活動に生かせば、企業価値が上がるでしょうし、そういう社会に変えていくことが夢です。
マネックスグループ代表執行役社長CEO松本大氏
辻:昔からおっしゃっている「個人が主役」「資本市場をよくする」という考えに通じているように感じます。
松本:それが僕のライフワークですからね。機関投資家やファンドが企業に投資しますが、その原資である保険料、年金、預金などは、突き詰めれば個人のお金です。主役は個人なのです。
証券会社を作ったのも、個人が主権者であり、主役であるという観点から、個人の投資をオンラインによってエンパワーしようと思ったからです。その結果、個人投資家は投資関連の情報が取りやすくなり、会社に投資しやすくなりました。
そこに、さらにもう1本、加えたいと考えました。それがマネックス・アクティビスト・ファンドです。ファンドへの投資を通じて、機関投資家と同じ体験を個人にも提供しようと思ったのです。