はじめに

部屋探しで内見ができない

フランス国内の不動産購入希望者にとっては有利な条件に思えますが、一方で完全に前向きには動けない理由もあります。

ネックになっているのが、上述した内見の禁止です。日本の場合、賃貸情報には間取り図が付けられています。ところがフランスの場合、間取り図が添えられていないことも多いのです。

不動産屋に張り出された売り出し物件の一覧

私も賃貸探しでは見学ができず、不動産会社が用意した映像(ただし、どの物件にもあるわけではありません)で確認したり、私が見学する代わりに不動産屋の担当者に現地へ赴いてもらい、ビデオ通話でチェックしたりしました。とはいえ、オンライン見学では完全に状況を捉えられない気がしてしまいます。

文字情報と多くない写真、今までの経験と勘、Googleマップなどで調べた付近の様子などから、頭の中で生活環境を立体的に組み立て、不動産屋や家主に質問をしつつ、最終的に住み心地を想像していますが、難しいもの。私の場合は賃貸ですが、購入を希望する人の場合、一生に一度の買い物になることもあるはずです。オンラインのみでの決心は、ハードルが高いはずです。

家賃の3倍の収入証明を求められる

テレワークが強く推奨される今、地価がとても高いパリに住む利点はあるのでしょうか。

フランスでは、家主や不動産会社が、賃借人に家賃の3倍の収入証明を求めます。上述したようにパリの月額平均が1,618ユーロ(約20万円)とすると、賃借人にはその3倍である4,854ユーロ(約60万円)の月収が必要です。

しかし、フランス国立統計経済研究所(INSEE)が2020年に出した統計によれば、パリの男性上級職(カードル)の手取り月収は4,377ユーロ(約53万円)、週35時間勤務の男性一般職は1,681ユーロ(約20万円)しかありません。女性の場合、平均額はさらに下がります。

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