はじめに

バリューチェーンはどう変わるか

デジタルコンテンツ分野は構造的にバリューチェーンの全てをオンライン上で完結できるセクターです。このことが、2020年代のインターネットによるDX3がもたらす効率化のメリットを最大限に享受できる要因と考えられます。

コンテンツ分野(音楽・映像・書籍)ではアナログが主流の時代に形成されたバリューチェーンの構成要素が、今後は「新興勢力による新たな仕組み」への代替によって効率化が進展することになると予想されます。

分野別需要の変化として音楽ではパッケージ音源(CDなど)からストリーミングサービス(Spotifyなど)、映像では民放(テレビ広告)からYouTube(動画広告)、書籍では紙書籍から電子書籍へ各シフトする動きがあります。

特に、音楽分野においては世界のレコードレーベルのメジャー6社が3社に統合(注5)されたほか、クリエイターが制作したコンテンツが直接Spotify経由でユーザーへ配信されるなどバリューチェーンが効率化される動きが既に起こっています。

(注5)1990年代ではメジャー6社としてWarner Music Group、Universal Music Group、Sony Music Entertainment、BMG、EMI、Polygramが存在していたが、現在はSony BMG、Universal Music Group、Warner Music Groupの3社に統合されている。世界ベースではこれら3社の市場シェアは6割に達しているが、日本では4割弱に留まっている。

クリエイターがビジネスモデルを作る

今後、同様の動きが映像や書籍の分野でも起る可能性があるでしょう。すなわち、映像分野のテレビ局、書籍分野の出版社などの数が集約され、クリエイターからユーザーまでのバリューチェーンも効率化される方向に向かう展開が起こりうると思われます。

従来は有能なクリエイターを組織が発掘・育成し、再投資によって収益の最大化を図るというスタイルが主流でした。今後はクリエイター自身が制作、配信およびマネジメントをコントロールする動きが強まると考えられます。

今後のデジタルコンテンツ産業ではバリューチェーンの再編が進行するなかで、クリエイターへの収益の配分シェアが高まり、クリエイター自身が「最適なビジネスモデルの構成要素」を選択できる時代になると思われます。