はじめに
退職金が控除額以内であれば、余った控除分はiDeCoに使える!
Aさんの退職一時金が1,640万円以下であれば退職所得控除を使い切ることはできません。簡単にいうと使いきれない控除分をiDeCoに使うことができるのです。その際の計算に使うのが「みなし勤続年数」で、計算式は以下の通りです。
みなし勤続年数の計算式
収入金額 | みなし勤続年数 |
---|---|
800万円超え | (退職金-800)万円÷70万円+20(年) |
800万円以下 | 退職金÷40万円 |
例えば、Aさんの退職一時金が1,000万円と仮定してみましょう。なお、Aさんが60歳までiDeCoの掛け金を拠出し続けると約220万円になる予定です。(元本確保型の金融商品で拠出をされているので掛け金と受給額は同額と想定します。)
60歳で受け取る1,000万円について「みなし勤続年数」を上表から計算すると、(1,000-800)万円÷70万円+20(年)=22年〔1年未満切り捨て〕になります。みなし勤続年数とiDeCoの拠出期間の重複期間があれば、iDeCoの退職所得控除からマイナスすることになります。少しややこしいので以下の図を参照ください。
Aさんのみなし勤続年数は28歳から50歳までの22年になります。一方でiDeCo加入期間は52歳から60歳までの8年になります。見ての通り、両者が重複している期間はありません。したがってiDeCoの税金を計算する上での退職所得控除は拠出期間全期間の8年分、40万円×8年=320万円となります。
AさんのiDeCoの受給予定額は220万円ですから320万円の控除額をマイナスすると税金はかかりません。このまま60歳までiDeCoで掛け金を拠出し続けても大丈夫ということがわかります。
なお、Aさんが60歳になるのは8年後の2029年です。2022年5月からはiDeCoの加入可能年齢は65歳未満までに拡大します。例えばAさんが継続雇用で厚生年金に加入していれば60歳を超えても掛け金の拠出が可能になります。
その場合には退職所得控除も増えることになり、1年間の退職所得控除額>iDeCoの年間掛け金であれば税金がかかることはありません。ただし、iDeCoを分割で受け取る場合には税金の計算方法が異なるため注意が必要です。
また、今回は退職一時金を1,000万円と仮定して計算を行いましたが、退職所得控除が余らない場合には税金の計算方法が異なるなど税金の計算は複雑であることを覚えておいていただければと思います。