はじめに
米当局者が相次いで発言
3月1日~5日の週に相次いだ現状の米長期金利上昇に関するFRB当局者の発言をみてみましょう。
● 2021年3月1日 日本時間19:30 バーキン米リッチモンド連銀総裁 発言
「米国の景気回復に伴い、短期的なインフレ率上昇を予測してはいるが、時間をかけて当局の目標水準へ向かうと確信している。景気には地平線上の夜明けが見える。非常に健全な春と夏を期待している。債券利回りの上昇については、景気見通しが強まっていることを考えれば驚きはない」
● 2021年3月3日 日本時間4:00 デーリー米サンフランシスコ連銀総裁 発言
「前回の景気回復局面では失業率が非常に低い水準だったにもかかわらずインフレ率は低く抑えられていた。米金融当局が新たな金融政策戦略を実施するには忍耐が必要になる。われわれは労働市場が達成し得ることを継続的に見直し、多くの国民が恩恵を受ける機会を手にする前に先手を打って金融政策を引き締めるのは回避する必要がある」
● 2021年3月4日 日本時間5:00 エバンス米シカゴ連銀総裁 発言
「米長期金利の上昇については心配していない。金利上昇は実体的な要因によるものだ。ワクチン接種が拡大しているようで、誰もが大幅な迅速化を望んでいる。順調に進んでいると思われ、このため、成長はさらに大きく回復に向かうはずだ。また、市場参加者は先週の米長期金利の上昇スピードに注目しているように見えるが、より長期的な視点を持つことが重要だと感じている。経済が非常に好調だった新型パンデミック流行前の1年前の状況と比較すると長期金利まだ低い」
● 2021年3月4日 日本時間5:17 ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁 発言
「金利に影響を与える数多くの手段がわれわれにはある。イールドカーブ・コントロール(YCC)のようなことも可能だ。これら全てが議論されており、どれも排除するつもりはないが、今の段階では現状維持に強くコミットしている。インフレが制御不能となる事態は望ましくないが、現時点ではその兆しはない。インフレ率が非常に急速に2%を突破する兆候は見られない」
● 2021年3月5日 日本時間2:08 パウエル米FRB議長 発言
「今年から来年にかけてインフレ率が上昇する可能性があるが、一時的なものだろう。一過性のインフレ加速に対しわれわれは慌てない。2%の平均物価目標の到達には時間がかかる。市場が秩序のない状況になれば問題視するだろう」
● 2021年3月6日 日本時間2:05 カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁 発言
「実質利回りにはあまり大きな動きが見られていない。動きの大半はインフレ期待またはインフレ補償において起きている。インフレ連動債(TIPS)市場と名目市場の両方を含めた米国債市場の最近の動向は、当局の枠組みがわれわれの希望通りのものを提供していることを示唆する」
● 2021年3月6日 日本時間2:09 ブラード米セントルイス連銀総裁 発言
「米国債10年債利回りの上昇は米景気回復への期待感を示している。利回りはまだかなり低水準にあり、懸念する水準まで達していない。政策面での行動も必要としない。利回り上昇の大部分は非常に自然なことだ」
「現時点でツイストオペの選択肢はないと思う。非常に強い米経済見通しと既に緩和的な金融政策がその理由だ。従って何らかの行動を起こして、現状よりさらにハト派的になる必要があるという状況には達していない」
(以上、各種報道より発言要約は大和証券作成)
このように見ていくと、多くのFRB当局者が現状の米長期金利上昇を静観するスタンスであるように思われます。
最も注目されたパウエルFRB議長の「一過性のインフレ加速に対しわれわれは慌てない」との発言が出た後、米10年債利回りは1.50%を軽々と上抜けて1.55%レベルまで上昇しました。