はじめに
多様性を受け入れる社会への期待
しかし、2019年12月2日ル・フィガロ氏電子版が報じた社会学者シャルロット・ドゥべ氏の分析では、「『子供を持たない選択をする若者が増えている』という報道は、メディア上の現象」であり、「調査結果によると子供を持たない選択をする人は5%で、この数値は30年間安定している」とのことでした。
先に説明した通り、フランスの行政と社会は「良い暮らし」と「子供を産み育てやすい国」を目指し、出産と育児をめぐる制度や環境を整えてきました。その一環として今、子供を持たない選択をした人たちの声が取り上げられている、と考えることもできます。
つまり、「産まないこと、持たないこともありなのだ」という、多様性の一つとして認識し理解する姿勢の表れ。なぜなら子供を持つことは個人に委ねられた自由な選択であり、その自由があってこそ「良い暮らし」であり「子供を産み育てやすい国」だからです。
日本がフランスから学ぶべきこと
役所や教会前広場のメリーゴーランドはフランスの伝統的な風景(パリ市庁舎前広場)
予測不能な過渡期にあるように見えるフランスの出生率ですが、その現状からは少子化に悩む日本が参考にし、取り組むべき事柄が浮かび上がります。制度を充実させることと並行して、それを活用できる環境を整えることが必至であること。妊婦や子供連れを歓迎する社会が望まれること。これらが整ってなおかつ、子供を産む選択が自由であること。
「女性として生まれたからには子供を産まねば一人前ではない」とか「女性の本当の幸せは子供を産み育てることだ」などといったお仕着せや社会圧力がある限り、「良い暮らし」も「子供を産み育てやすい国」も実現できないと感じています。
〈文:Keiko Sumino-Leblanc / プレスイグレック〉