はじめに
米雇用回復を妨げている要因の一部は解消しつつある
先月と全く同じ内容ですが、これまでの雇用回復ペースが鈍い要因として、米FRB当局者たちが挙げているものは下記3点です。しかし上述したように、一部はすでに解消しつつあります。
(1)米失業保険給付の追加支給延長(9月6日まで)によるもの。
安い賃金(時給)で雇用につくよりも、失業保険を受給してる方が高い収入になるので、敢えて就業しない人がいる、というものです。ただこれに関しては、米共和党出身知事の州(赤の州)を中心に、既に米国のおよそ半分の州で失業手当ての上乗せ給付金が既に削減されている。また、賃上げ・現金支給といった手段も講じられている。
(2)学校が完全再開(面談授業)していないために、子供を持つ(母)親が就業できない。
ただし新学期が始まる9月以降、フル対面授業が再開されれば、パート・アルバイトに就ける。
(3)新型コロナウイルスのデルタ変異株感染が拡大しつつある。
10月まで米FRBは動かない
この先のドル円相場はどうなるでしょうか。筆者は、(1)日本企業による海外企業を買収するM&A案件の増加、(2)原油価格上昇(回復)による日本の輸入金額増、(3)昨年のパンデミック時の輸出企業の外貨資産取り崩し鈍化、の3つを理由に昨年末から円安相場を予想してきました。これに米テーパリング早期開始観測というファンダメンタルズ要因も加わって、ドル円は年後半も底堅く推移すると予想しています。
ただ、このファンダメンタルズ要因の米テーパリング早期開始観測は、今後発表される米指標で、ころころ変わると思われます。しかも、米FRB当局者が「9月分の米雇用統計を見たい」と言っている以上、それまで政策変更を実施することはありません。筆者も含め市場参加者だけが、米指標見て好き勝手なことを言って相場が振り回される状態が続くのは必至と思われます。
年後半になれば、今は全く議論の対象になっていない「米利上げ」開始時期についても雑音が入ってきやすくなるでしょう。従って、ドル円は2022年3月まで110円を挟んで上下2~3円の右往左往相場が予想されます。
<文:チーフ為替ストラテジスト 今泉光雄>